だから、本稿で説明した「弱者の兵法」を、まずは日本語で実践してみることを勧めたい。
とりわけ最後に強調した、意識してたくさんの手本を聴き、読むことが本当に大事だ。
僕は文学作品を読むことを特に強く勧めたい。文学とは言葉の美術館である。もっとも卓越した、もっとも美しい、もっとも巧妙な言葉の手本がそこにあるからだ。
すぐに仕事に応用できる実用書ばかりに手が伸びてしまうのはわかる。しかし、楽器の練習にスケール・トレーニングが欠かせず、スポーツの練習に筋力トレーニングが欠かせないように、話したり書いたりするための練習の基礎は、文学を読むことであると思う。
信じられないだろうか。ならば例を挙げよう。
僕が慶応大学で研究指導をしていた学生の1人が、卒業に際し学科から表彰を受けた。120人の卒業生の中で最も優れた卒業論文を書いた3人のみに贈られる賞だ。彼は現代の理系の若者には珍しく、小説を多く読む文学少年だった。
僕自身も、小さな頃から宇宙だけでなく文学も好きだった。中学から電車通学だったので、その時間はいつも小説を読んでいた。現在も通勤時間に読むのは、論文でも実用書でもなく、小説である。
あなたがこの記事を最後まで読んでくれたということは、きっと話し、書く能力を高めたいという真摯な気持ちがあるからだろう。ならば、お節介かもしれないが、明日の通学や通勤の時間に、携帯電話は鞄にしまい、キオスクで文庫本を1冊買い求めて、ページをめくってみてはいかがだろうか。
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