自身も血液がん(悪性リンパ腫・ホジキン)と乳がんの患者で、キャリアコンサルタントの砂川未夏さん(42)は、働き盛りのがん患者ならではの悩みがあると言います。
「ミドル世代は、職場でも家庭でも重要な役割を担う分、自分の体のことや治療のことだけでなく『働く』ことに関する悩みが増えます。 そこに結婚、出産(妊よう性)、育児、介護などにおけるプライベートの部分も絡み、悩みが複雑になるのです。また、正規社員と非正規社員でも事態は異なります。とくに非正規社員は、こういう場合に退職に追い込まれやすく、そうなれば生活を直撃してしまいます」(砂川さん)
また、がんは長く付き合う病気(治療後も定期検査は平均5~10年必要)であり、砂川さんは「悩みも段階的に変わってくる」と解説します。
勢いで会社を辞めてしまうことのリスク
西口さんはセカンドオピニオンで「5年の生存率は高くない」と言われたため、キャンサーペアレンツの活動に注力する目的で仕事を辞めることを考えました。ただ、妻や両親に相談すると「すぐに死ぬわけではないのだから、働きながら活動をしてはどうか」と言われ、働き続けることにしたのです。その結果、職場の理解と協力を得ることができました。
「社長に、病状や余命のことも打ち明けました。社員が働きながら治療することは、会社としても前例がなかったのですが、幸いなことに制度をうまく使って復帰できたのは、会社のおかげです。働く以上は特別扱いされたくないので、全力で仕事に取り組んでいます」(西口さん)
一方で「仕事よりも家族と一緒にいたほうがいいのでは?」と言われて、勢いで会社を辞めてしまう人もいるだろう、と、西口さんは推測します。それだけ「がんと共に働く」ことは、ハードルが高いのです。
「抗がん剤を投与する化学療法室は、基本はお年寄りばかりで、自分より若い世代は見たことがありません。この世代の患者が、がんや仕事とどう向き合えばいいのか。上司や同僚とどう付き合えばいいのか。分からないのは当然だと思います。周りの人もどうしていいか分からないはずです」(西口さん)
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