働き盛りの「がん」、悩みはこんなに複雑だ

会社や家族と、何をどうすり合わせるべきか

自身も血液がん(悪性リンパ腫・ホジキン)と乳がんの患者で、キャリアコンサルタントの砂川未夏さん(42)は、働き盛りのがん患者ならではの悩みがあると言います。

「ミドル世代は、職場でも家庭でも重要な役割を担う分、自分の体のことや治療のことだけでなく『働く』ことに関する悩みが増えます。 そこに結婚、出産(妊よう性)、育児、介護などにおけるプライベートの部分も絡み、悩みが複雑になるのです。また、正規社員と非正規社員でも事態は異なります。とくに非正規社員は、こういう場合に退職に追い込まれやすく、そうなれば生活を直撃してしまいます」(砂川さん)

また、がんは長く付き合う病気(治療後も定期検査は平均5~10年必要)であり、砂川さんは「悩みも段階的に変わってくる」と解説します。

■診断時:がんを告知されたショックの中、治療の選択だけでなく、仕事や生活をこれからどうすべきか悩む。仕事を続けるか、休むか、辞めるのか? 職場になんと伝えればいいのか? 誰にどこまで伝えればいいのか?(職場内、家族、友人など)仕事の引き継ぎをどうするか?
■治療中:休職中であれば、副作用などで体調が不安定になり、元に戻れるのか不安になる。休職していない場合は、急な体調の変化により欠勤しがちになるなど、迷惑をかけていることで申し訳ないきもちが膨らむ。
■経過観察時:副作用や体力の問題で、すぐにフルタイムに戻れるかどうか悩む。 一見元気そうでも倦怠感やしびれなどは外見からはわかりづらいため、理解を得ることが難しく、自信喪失、居づらさ等から退職を考えることもある。復帰後は、今までできていたことができなくなり落ち込んだり、早く挽回しなくてはと焦ってしまうこともある。

勢いで会社を辞めてしまうことのリスク

西口洋平(にしぐち・ようへい)/1979年、大阪府生まれ。神戸商科大学(現:兵庫県立大学)卒業後、エン・ジャパンに新卒1期生として入社。2015年のはじめ「ステージ4」の胆管がんであると告知される。2016年4月、インターネット上でのピア(仲間)サポートサービス「キャンサーペアレンツ」を立ち上げる。現在も抗がん剤による治療を続けながら、仕事と並行して、精力的に活動。一児の父であり、両親も健在。

西口さんはセカンドオピニオンで「5年の生存率は高くない」と言われたため、キャンサーペアレンツの活動に注力する目的で仕事を辞めることを考えました。ただ、妻や両親に相談すると「すぐに死ぬわけではないのだから、働きながら活動をしてはどうか」と言われ、働き続けることにしたのです。その結果、職場の理解と協力を得ることができました。

「社長に、病状や余命のことも打ち明けました。社員が働きながら治療することは、会社としても前例がなかったのですが、幸いなことに制度をうまく使って復帰できたのは、会社のおかげです。働く以上は特別扱いされたくないので、全力で仕事に取り組んでいます」(西口さん)

一方で「仕事よりも家族と一緒にいたほうがいいのでは?」と言われて、勢いで会社を辞めてしまう人もいるだろう、と、西口さんは推測します。それだけ「がんと共に働く」ことは、ハードルが高いのです。

「抗がん剤を投与する化学療法室は、基本はお年寄りばかりで、自分より若い世代は見たことがありません。この世代の患者が、がんや仕事とどう向き合えばいいのか。上司や同僚とどう付き合えばいいのか。分からないのは当然だと思います。周りの人もどうしていいか分からないはずです」(西口さん)

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