マイナス金利継続で金融波乱が起きる懸念 日欧の金融政策が米国に負の影響を与える

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「Behind the curve(政策が後手に回ること)」に陥ることを警戒しているFRBからすると、依然として「市場は利上げの可能性を過小評価している」といえる状況にあり、この先も利上げ先送り観測によって株価が上昇する局面で、FRB要人から「タカ派的発言」を繰り返される可能性は高い。

そんな中、市場の一部からは週明けの9月12日に行われるブレイナード理事の講演に注目する声が高まって来ている。それは、ブレイナード理事が「ハト派」であると同時に、民主党のヒラリー・クリントン候補に法的限度額の2700ドル(約29万円)を献金している唯一の理事で、「ハト派」の発言をする可能性が高いと思われているからである。

換言すれば、民主党政権に近いブレイナード理事が予想以上に「タカ派」的な発言をすれば、市場は利上げを急速に織り込みに行く可能性を秘めているということである。

「市場は利上げの可能性を過小評価している」と警告を与えて来たFRBにとって、市場が利上げを意識したことは歓迎すべきことだ。しかし、利上げを織り込みに行った市場の反応は、若干FRBの想定とは異なっていたかもしれない。

日銀とECBの金融政策に、限界と失望感?

前週末の債券市場は、利上げ観測の高まりを受け10年国債利回りは前日比0.06%上昇し、1.675%と2カ月半ぶりの水準となった。しかし、利上げに最も敏感に反応するはずの2年国債の利回りは0.728%と、前日比ほぼ変わらずであった。

インフレが目標の2%に達していない中で徐々に利上げを市場に織り込ませ、金融市場への悪影響を抑えたいFRBにとっては、短期ゾーンの利回りが上昇せずに、長期ゾーンの利回りが上昇するイールドカーブのスティープ化(鋭角化)は想定外だったのかもしれない。

市場の反応が想定通りにならなかった背景として考えられることは、市場に日銀とECB(欧州中央銀行)の金融政策に対する限界と失望感が漂い始めていることだ。

日銀は、今月の金融政策決定会合で金融緩和政策の「総括的検証」を行うことを明らかにした。それに続いて、ECBのドラギ総裁も、市場の期待に反して金融政策の現状維持を決めた8日に開催された理事会後の記者会見で、量的緩和の手法を「再評価する」と語り、「総括的検証」をする方針を示した。

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