マイナス金利継続で金融波乱が起きる懸念 日欧の金融政策が米国に負の影響を与える
量的緩和の拡大とマイナス金利政策を採る日銀とECBがともに金融政策の副作用に言及するとともに検証に入るということは、市場に現在の金融政策に限界を感じさせる材料でもある。
先週末時点の日本10年国債利回りは-0.02%と、日銀が「総括的検証」を行うことを明らかにしてから「マイナス金利政策は深掘りできる」と繰り返す日銀総裁を嘲笑うかのように上昇基調に転じ、ゼロ%に近付いてきた。
また、ECBが金融政策の現状維持を決めた欧州でも、指標となるドイツ10年国債利回りが先週末に0.023%と、6月23日以来のプラス利回りに転じて来た。
デフレ懸念が根強く残り、マイナス金利政策を採り続ける姿勢を保っている日本と欧州の金利が上昇基調を示していることは、マイナス金利政策の限界を示すものだ。そしてそれは、中央銀行が超過準備預金に付利するマイナス金利と、債券市場の利回りの間に「裁定」が効かないことを露呈するものでもある。
日欧マイナス金利政策の「負の影響」が米国へ?
マイナス金利政策と債券市場の利回りの間に「裁定」が効かない中で国債利回りをマイナスに維持するためには、債券市場で国債を買い続けるしかない。そうした中で「量的緩和」に限界が見えてくるということは、「マイナス金利政策の限界」が見えて来る、言い換えれば「量の切れ目がマイナス金利の切れ目」であるということだ。
日欧の国債利回りがプラス圏で取引されるようになれば、域内に留まる資金が増えることになり、それは国債消化の約半分を海外投資家に頼る米国の金利押し上げ、イールドカーブのスティープ化をもたらす要因になる。
景気回復、物価上昇という結果を出せずにいる日欧のマイナス金利政策の負の影響が、米国国債市場に及び、世界の金融市場の波乱要因となる可能性には注意が必要だろう。
投資家にとって最も重要なことは「ファンダメンタルズの変化」である。そして、最大の「ファンダメンタルズの変化」は、「金融政策の変更」である。
FRBが「金利の正常化」に向かうと同時に、マイナス金利政策を柱とした金融緩和策の強化を図る日欧の金融政策に限界が見えて来たということは、「ファンダメンタルズ」が大きく変化して来ているということだ。
「金融政策の限界」は「金融政策の変更」ではないが、政策効果が変わるという点において実質「金融政策の変更」である。投資家が認識しておかなければならないことは、FRBが利上げを先送りしても、日欧の金融政策が限界に達すれば、「ファンダメンタルズは大きく変化する」ということだ。
そして「ファンダメンタルズが大きく変化する」局面で重要なことは、これまでの延長線上で物事を考えないことだ。
特に、今回訪れるかもしれない「ファンダメンタルズの変化」は、これまで投資家が経験して来た「金融政策変更によるファンダメンタルズの変化」ではなく、誰も経験したことのない「金融政策の変更を伴わないファンダメンタルズの変化」かもしれないからだ。
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