中高生限定「ゴルスタ」騒動が示した本当の闇 救われない子供たちは、たださまよっていく
彼が知る、ゴルスタを実際に使っていた子供たちの典型例は、関東のいわゆるマイルドヤンキー層だ。「大都市から微妙に離れた鉄道空白地帯で、地元の学校で女子でも性的ないじめを受けるなどの深刻ないじめに遭い、LINEでも”ぼっち”、通信制の高校に通って悪い友達ができて、同級生や先輩から援助交際の勧誘を受けて悩むような、そういう子」。そして「かつていわゆる”パクツイ”(人気のあるツイートを盗用し、お気に入りを稼ぐ)などを起こしたようなレベルのツイッター中高生がゴルスタ層と重なると思っていい」。
LINEに飽きた、いわゆる地元のヤンキーと呼ばれる子供たちの中でも流行に敏感なリーダー格が「お前もやれよ」と同級生や後輩たちを誘い、利用者が増えていく。しかしその動画生配信機能(ゴルキャス)で行われるものの中には、招待したメンバーだけの閉鎖的な環境で閲覧されるいじめ実況もあったという。
「学校で仲間外れにしているような子を呼び出していじめ、その様子をライブ配信するんです。もちろんゴルスタ運営は当初、そういった不健全な使い方をしているユーザーを戒めていったのです。いじめは、ボコボコにするのも脱がすのもあります。彼らの感覚からすれば当然ですよ。大人がいないということはそういうことですが、利用者の中高生からすれば『援交を持ちかけるキモいオヤジがいないから、すごい楽』なわけです。ゴルスタは、いじめる子やイケてる子にとっては、地元の延長かつ、自分が全国レベルで目立てる舞台。いじめられたりイケていなかったりする子にとっては、地元の現実から離れたバーチャルな放課後の居場所だったんです」
強権的な運営は「むしろ、わかりやすくていい制度」
さらに、大人が眉をひそめるようなゴルスタ運営の”対応レベル”は、利用者である中高生にとってはちょうどいい制度だったというから驚く。「運営担当は、ターゲットのレベル感に近い社員でしょう。だから同じ目線でやり取りができ、同じ言語を話せるんです」。反省文制度を知ったとき、K氏は「なるほど」と感心したくらいだ、と話す。
「悪いことをしたらアカウント凍結、でも反省文さえちゃんと書いたら許してもらえて凍結解除というシステムは、中高生にとっては『わかりやすくていいじゃん』と受け入れられる。そんなシステムは『宿題なんてやっていかなくても、反省文を書けば許してもらえる』という感覚の一部の子どもたちにとっては当たり前のことで、サービスとしては上手いとさえ思う。マイルドヤンキーをうまくごっそり囲い込むノウハウを怖いくらい持っている」
ゴルスタで運営に追及され、必死に謝る子供たち。その姿は「カルト? 本人たちにとってはそんなんじゃないですよ。放課後先生に怒られている子たちが集まって、大真面目に学級会をしているのと同じ。楽しいんです」。彼らにとって人生の多くを占める学校の延長線上にバーチャルな放課後空間があり、そこで先生に怒られ、謝り、あこがれられ、面白いことをして目立てばクラスの人気者になる。
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