震災後も変わらなかった日本社会の「異様」 東大卒国際政治学者、三浦瑠麗氏に聞く
――2012年3月に東日本大震災について論文を発表しました。
東日本大震災の時に、私はリスク妊娠のため都内で寝たきりでした。絶対安静にしていなければならず、原子力発電所事故が拡大しても逃げられずに死ぬかもしれないと思っていましたね。出産後しばらくは会議の手伝いなどをしていて、研究と距離を取り「自分のことが止まった」時期でした。
しかし、ジャーマン・マーシャル・ファンドの研究員の友人から、発生から1年たった東日本大震災について一緒に論文を書くことを提案され、調査を始めました。博士研究は「イラク戦争を知りたい」という個人的な興味から出発しましたが、震災後は「日本への危機感」を感じていました。現実の政治環境を知るために政治家へのインタビューを始めました。結果、民主党政権に復興戦略が欠けていたと分かりました。
震災後、日本全体がカタストロフィを望んでいました。震災によって日本社会が変わると主張する人は実際に行動に移すというより、日本が変わる気分だけで盛り上がっていたのです。
そして「震災時に社会人でなかった、なって間もなかった若者こそが偉い、社会を変えるはずだ」と主張する評論が出始めました。しかし、それぞれの世代は、若いころに何かしらの「事件」が起こり、世代の性質を規定される面があります。1960年代はベトナム戦争、2000年代は9・11やイラク戦争が「事件」に当たります。震災という「事件」が若者に与える影響は特別なことではなく、カタストロフィへの期待に現実は伴いません。私にとって震災は「日本は変われない」という事実を突き付けるものでした。
若者が社会を変えるためにできること
――最後に受験生に向けてメッセージをお願いします。
今の受験生は「変わりたくない日本」を生きる世代だと思います。日本は高齢化しています。高齢者は生きる中で築いた財産を失いたくないので、社会が変わることを望みません。
若者が社会を変えるためにできることは2つあると考えています。ひとつ目は政治で決めることを限るという方法です。多数決で決まる政治は少数者を抑圧します。民間が決められることが多い社会では少数者も自由に生きられます。もうひとつが地域政党、一定の地域の小選挙区で支配的な政党を作って、政界に影響力を与えること。第1党が地域政党と連立内閣を組まざるを得なければ、地域の主張を通せます。
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