ハフィントンポストが陥った「中年の危機」 なぜ創業編集長は辞任したのか

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かつて、ハフィントン・ポストはネイティブアドのトレンドを決めるプレーヤーであったが、バイヤーたちによるとその分野でも停滞しているようだ。ハフィントン・ポストがクライアントに提供するネイティブアドは、ここ3年変わっていないという。「彼らはこれまで作り出したものから変えようとしない、一方でほかのパブリッシャーたちは、より率先して動こうとしている」と、同バイヤーは言う。ディープ・フォーカスのCEOであるイアン・シャファー氏によると、そのスケールの大きさからハフィントン・ポストは、まだ検討されるポジションにあるが、ほかのパブリッシャーが提供する広告の方がクリエーティブという点ではより面白いという。

「我々はHBOのトークショー『ポリティカリー・インコレクト』の広告のため、我々にとってはじめてのスポンサー契約を購入した。本当に最初の段階で、そこに行き着いたんだ。ハフィントン・ポストを推薦しないというよりも、クリエーティブな仕事という点について考えた場合に、(業界で)もっとも豊かな仕事を提供しているとは限らない」と、シャファー氏は語った。

メディアコムの北米の最高デジタル・アナリティクス責任者であるスティーブ・カルボーン氏はハフィントン・ポストに関して、もう少し優しい態度を取っているようだ。それでも、ハフィントン・ポストが提供するものが、ほかのデジタル・パブリッシャーと同じ程度のクオリティだとしても、マーケットには類似のオーディエンスとリーチを提供するオプションがほかにもあるため、ハフィントン・ポストに当てられる予算は下がると語っている。

不確定な将来

ハフィントン・ポストは近年CEOであるジャレッド・グルスド氏によって率いられてきたが、常にハフィントン氏の見せ場となってきた。そして、エディトリアルに彼女が深く関わってくることは、ニュース編集室にとってフラストレーションの原因となってきた。新しい編集長を獲得することで(まだ探している最中だ)、ハフィントン・ポストが集中する分野を見つける良いキッカケとなるかもしれない。(アリアナ・ハフィントン氏が出版した本の題材である)睡眠やハフィントン氏の野心的なグローバル拡大計画は、新しい編集長の下、カットされていくのだろうか。

しかし同時に、親会社の下でどうやってハフィントン・ポストが変わっていけるのかという疑問もある。1年前にベライゾンがAOLを買収した際に、ハフィントン・ポストもベライゾンの傘下となった。つまり、この5年間で、ハフィントン・ポストは独立会社から2つのデジタル会社の一部という立場に変わったことになる。しかも、グループに米ヤフーも加わったことで、差別化はさらに難しくなるだろう。広告バイヤーたちは、GoogleとFacebookに代わる強力な第三のオプションを探しているとは言っても、「場違いなオモチャの島」とデジタル・バイヤーたちに呼ばれてしまっている場所から購入するとは限らない。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)

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