日本株「戻り局面」では1万7900円超えが焦点 長期円高トレンドを考慮すれば上値は限定的

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このように考えると、非常に面白い展開になってきたといえる。昨年来、2016年は円高・株安になるとの見方を本欄で繰り返し指摘し、ドル円・日経平均の安値の水準が予測通りにそれぞれ100円、1万5000円割れまで下げた。ここまでの動きになれば、十分であろう。比較的短期間で下げたこともあり、この水準を何度か試したが、やはりこの水準を大きく下回るのは難しい。値幅的にもかなりの達成感がある。こうなると、市場はなかなか下げにくくなる。その反動が出ているのが今の市場である。そのため、まずはどこまで上値があるのかを確認することになる。

目先は今年5月につけた高値の1万7251円や、4月につけた1万7613円が目安になる。また、昨年6月の高値と今年の安値の半値が1万7908円である。このあたりを念頭に入れておくとよいだろう。この1万7900円はPER15倍の水準にも相当する。逆にいえば、1万7900円を超えられないと、再び反落の憂き目に遭う可能性はある。その意味でも、戻り局面に入ったときにこの水準を超えることができれば、本格的な上昇基調に回帰したと考えてよいだろう。

結局のところドル円は戻り売り

少しテクニカル的な話になったが、これはどちらかといえば、現状の値動きから見た客観的な水準である。むろん、1万6900円を大きく超えて、1万7000円台での推移が定着しない限り、安心できない。また、1万6900円前後には戻り待ちの売りもかなりあるだろう。その意味では、9月2日発表の8月の米雇用統計を見たうえで判断したいと考えている投資家もいよう。逆に、ここで株価がさらに上昇することを見込んで買い始めている投資家もいるものと思われる。

したがって、米雇用統計の内容が1万7000円を簡単にクリアするようなものであれば、戻り待ちの売りが手控えられる一方、新規の買いが一気に入ってくることになり、株価は短期間で急騰するかもしれない。逆に失望的な内容になれば、戻り売りに加え、高値を買った投資家の投げも出てくるため、下げが大きくなることも想定される。そのときには、ドル円は円高に向かっていくだろう。どちらの目に出るのかは、正直なところまったくわからない。とはいえ、雇用統計だけですべてが決まるわけでもない。あくまで短期的な材料でしかないことを理解しておく必要がある。

市場では、100円から103円に戻したことで「円安になっている」と騒いでいる。125円から落ちてきた相場で、たかだか3円、円安になっただけである。本欄でも繰り返すように、円安は3年しか続かず、今年からすでに円高トレンドに入っている。最大5年程度、円高が続く傾向があることを考慮すれば、結局のところドル円は戻り売りであり、日本株の上値も限界的である。しょせん、日本株は円高の呪縛からは逃れられない。日本株は長期ではいったん下げると3年程度は下落する。短期勝負の投資家は別だが、長期で見ている筆者にとっては、戻り売りのタイミングを計る絶好の機会が到来するのを待つだけである。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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