EUがアップルに追徴税支払いを命じた理由 アップルが命令を受け入れる可能性は?
[ロンドン 30日 ロイター] - 欧州連合(EU)の欧州委員会が30日、アイルランドの米アップル<AAPL.O>に対する税制優遇措置が違法な政府補助だとして、アップルに最大130億ユーロ(145億ドル)の追徴税支払いを命じた。
その理由などについてQ&A形式で以下にまとめた。
─欧州委の主張は。
欧州委は、アイルランドがアップルに適用している税制優遇措置には、税法上の根拠がないと判断している。欧州委によると、アップルがアイルランドに工場を建設する見返りに納税額をほぼゼロにする取り決めは不公正で、通常の税制の下での金額を支払うべきだという。
─アイルランドが課税しないのになぜEUが懸念するのか。
EUの考えでは、企業への課税を甘くすることを見過ごせば、まともな税制を敷いている国から投資や雇用が流出してしまう。またアイルランドの優遇措置を享受しているアップルが毎年得ている多額の利益は、ほとんどがアイルランドの外で生み出されている。だからアイルランドの措置が他のEU加盟国が確保できるはずの税収を奪っているという理屈だ。
─アイルランドは予期せぬ税収を手に入れるのか。
当面はそうならない。アイルランドの財務相は、欧州委の判断を不服としてEU司法裁判所に提訴する方針を表明。アップルも何らかの法的措置を講じるかもしれず、専門家によるとアイルランド国内の裁判所で納税要求に異議を申し立てることができる。
─アップルが命令を受け入れる可能性は。
アップルには現金と市場性証券合わせて手元に2000億ドル強があるので、支払い能力は確実にある。だが130億ユーロは同社にとって大きな金額でない。このためこの問題が決着しないことによる不透明感が投資家に懸念を生むとは思われず、株主が解決を急げと圧力をかけそうにもない。同社が納税に関する慣行の堅持に意欲的なことは、クック最高経営責任者(CEO)の議会証言でも証明されている。
─米政府の考えは。
米財務省と議会は、EUが税制を巡る判断に独占禁止法を用いることに批判的。こうしたやり方は米国企業を狙う撃ちにして、受け入れられている国際的な慣行から逸脱し、米国から欧州への投資を脅かしていると主張している。
米財務省は先週、欧州委が現在の方針を続けるなら対抗策を検討する意向をにじませた。米国の法律では、米企業に差別的な課税を適用する国や人物に対しては、大統領が課税額を2倍にする権限を認めている。
─EUがこの争いに勝利すれば、多国籍企業はEU域内で課税逃れできなくなるのか。
そうはならない。今回の場合、アイルランド政府当局者がアップルとの取り決めについてで異例なほどあからさまに説明している文書を欧州委が入手することができた。
しかし今後、税制優遇を通じて企業投資を確保したいと考えるEU加盟国は、文書を残すにあたってもっと慎重になるだろう。
欧州委としても、ある取り決めが一般的な税制慣行から「極端に」逸脱しているという明確な証拠がなければ、追徴税支払い命令は出しにくいだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら