コーヒーに全てを捧ぐ男のこだわりと寄り道 「至高の一杯」の裏には妥協のない努力がある

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――川島さんを「まだまだ」と動かし続けるパワーは、どこから涌いてくるのでしょう。

川島氏:世界中の農園を訪ねていますが、行くたびに新たな発見があります。

今度ブラジルに行くのですが、そこの農園主から以前、「初めて日本人が来た」と言われ、ブラジルにおいてさえ、まだまだ知られていない場所があるのかとショックを受けました。

こうした終わらない発見が、私の好奇心を動かし続けてくれているのだと思います。もっとコーヒーを知りたいという欲求が私を動かしていますが、「まだまだ」全然満足していません。

コーヒーを通じて伝える真の国際協力

川島氏:栽培技師という職業上の技術だけで言うと、私より上の人はたくさんいます。では私の強みは何か。それは、さまざまな生産国の技術や品質、品種を知っていることです。

そして、生産国と消費国を知っていること。つまり一般的に栽培技師は、自国のコーヒーしか知らないし、市場が何を求めているのか、今後どんなコーヒーが求められるようになるのか知りません。消費国と生産国の架け橋となる。「適切に」繋げていくのが、私の役割であり、今の使命だと思っています。

また、生産国と消費国の適切な関係で言うと「サステイナブルコーヒー(持続可能性に配慮し、現在だけではなく未来も考えたうえで、自然環境や人々の生活をよい状態にたもつことを目指して生産され流通するコーヒーの総称。)」の問題があります。

サステイナブルコーヒーと一口に言っても、「貧しい人から買ってあげましょう」というのは、貧しいままでいるという前提があり、適切ではないと考えます。よく「魚をあげるより、採り方を」と言いますが、そこに「捌き方を」伝えることで、付加価値が生まれ売ることができるようになる。それこそが貧しさから脱却できる真の国際協力です。

これからも、私に出会うのを待っているコーヒーの樹と、畑と、生産者が世界のどこかにいると信じて、それを見つける旅を続けて参ります。その活動を通して皆さんに特別な一杯と、私なりの世界に対するメッセージも一緒に発信していきたいと思います。

(インタビュー・文/沖中幸太郎)

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アルファポリスビジネス編集部

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