さらに、飲食店。和洋中を問わずおいしい料理を出すことは当然として、清潔さや衛生管理も十分売りになります。たとえばオープンキッチン形式で調理の過程を可視化すれば、厨房の奥で何が起こっているのかが心配な中国人には、安心感とエンターテインメントが提供できます。ですから、日本式に目の前のカウンターで食材をグリルしてくれる「鉄板焼」もそこそこ人気を呼んでいます。客の目の前で調理するのですから、ちょっと前に中国でよく話題になっていた「ドブに浮かぶ油をすくって再利用する」行為などは難しくなりますね。
ついでに言うと、すし屋は伝統的にオープンキッチンですが、こちらの中国人経営のすし屋のカウンターに座ると、格好だけは板前風の中国人がいい加減な包丁さばきと怪しい手つきで、すしらしきものを握る姿が観察できます。日本の本物の店が一流の職人を連れて出店すれば、中国人消費者に大いに喜んでもらえるはずです。
医療サービスにも可能性があります。今のところ中国の大都市で開業している日本人向けの病院は日本人患者中心ですが、患者へのサービスのきめ細やかさは、中国の富裕層にも必ず受けると思います。
サービス業の生命線は「従業員の態度・行動」
藤村和宏・香川大学教授の研究(吉田秀雄記念事業財団「AD STUDIES Vol. 11, 2005」)によると、美容院、レストラン、病院、旅行代理店、生命保険、銀行など、多くのサービス業で店舗選択の最大の重視点が「従業員の態度・行動」であることがわかっています。サービスの内容や技術の評価もさることながら、感じのよい接客が新規客を常連客に変え、その評判がまた別のお客様を連れて来るのです。
したがって、サービス業では従業員トレーニングが生命線となるのですが、これがマニュアル頼みの表面的な指導になっているケースが多いのです。結果として、いんぎん無礼でお客様の心に響かないサービスとなってしまっては、日本でもグローバル市場でも通用しません。
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