「イエレンショック」の可能性は否定できない 金利上昇でスパイラル的下げというシナリオ

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結果はご承知の通り。2008年のリーマンショックはどうだったか。2008年の金融危機は、「リーマンショック」という名前こそついているものの、実際には2007年に問題が発生した「サブプライム・ローンショック」というべきであり、すでにこのときに金融市場の崩壊の可能性は高まっていた。その結果、リーマンブラザーズが米国政府の救済を受けられずに倒産したことで、世界的な金融危機へつながった。いずれにしても、これらの金融危機的な株価暴落には、明確な要因が存在した。ちなみに、2000年の8年後にリーマンショックが起き、さらにその8年後が今年である。

現時点で米国株は過去最高値を更新する動きにあり、とても金融危機が起きるようにはみえない。低金利状態が続き、投資家は高いリターンこそ求めないものの、一方である程度のリターンの確保に躍起になっている。そのため、利回りが依然として相対的に高い米国債を買い、利回りの確保に走っている。しかし、ポートフォリオの大半を米国債にするわけにもいかない。そのため、投資資金の一部を高配当の米国株に投資しようと考えたのが、最近の新しいトレンドであった。

その結果、長期的に上昇基調にある米国株の中で、さらに高配当で安全性が高いと思われる銘柄への投資が増えたといわれている。もちろん、以前から高配当銘柄に投資する動きはあったのだが、その動きが顕著になったのはここ最近である。このように、一部の投資家はすでにかなりのリスクを抱え込んでいる可能性がある。そもそも、リスク資産である米国株を安全資産である国債と同等に扱うことは、危険な発想である。賢明な投資家はすでに気づいているだろうが、このような投資スタイルが長期的に上手くいく可能性は低いだろう。

そもそも、高配当銘柄といえども、投資リスクは一般の株式投資と同じである。さらに万が一、利回りが上昇すれば、投資リターンは大きく低下する。結局のところ、低金利がこれらの投資戦略のバックボーンであるため、金利が上昇し始めると、すべてが気泡と化す。市場金利はなかなか上昇しなかったため、これまでの米国債への投資は十分に利が乗っている。

金利上昇でスパイラル的下げというシナリオ

万が一、イエレンFRB議長がジャクソンホールでの講演で、前のめりになるFRB高官たちの発言を牽制しなかった場合には、金利が上昇し、まずはこの米国債のポジションが解消される可能性がある。その結果、さらに金利が上昇し、米国株にも売りが出ることも想定されるだろう。すでに過去最高値圏にあるだけに、高値で買ってしまった投資家は早めにポジションを解消する必要に迫られることになり、これがスパイラル的な下げにつながる、といったことも念頭に入れておく必要があるかもしれない。

このようなシナリオはあくまで可能性のひとつだし、確率はかなり低いだろう。筆者も、イエレン議長がわざわざ市場を壊すような発言をするとは考えていない。しかし、だからこそ注意が必要とも考えている。夏季休暇シーズンの最後かつ最大のイベントと化した26日のイエレン議長の発言と、それを受けた米国市場、さらに週明けの日本株の動きに注目だ。26日の講演が「イエレンショック」につながらないことを祈るばかりである。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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