「レールガン」とは一体どのような兵器なのか 200キロ先へ弾丸を飛ばす電磁兵器の威力

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十分な電力が必要になるため、足りない場合には『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲のように、『エヴァンゲリオン』のヤシマ作戦のように…(写真:Official U.S. Navy Page)

十分な電力供給能力がない艦にレールガンを搭載した場合、『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲みたいに、他の分野への電力供給を止めて、発生する全電力をレールガンに投入する、なんていうことになりかねない。しかしそれでは実用性の面で問題がある。

先日に就役したばかりの新型ステルス駆逐艦「ズムウォルト」は電気推進艦で、最大で80MW(メガワット)近い発電能力を持っている。その電力を推進と戦闘システムの間でニーズに応じて振り分けられるとの触れ込みだ。この数字を見るかぎり、他の分野で使用する電力をギリギリまで抑え込めばレールガンを撃てそうではある。

日本でレールガンを開発する場合の課題

日本に固有の課題としては、試射がある。低出力・短射程のレールガンを試作しているうちは問題にならないが、大出力・長射程になってくると、それを実際に最大射程で撃ってテストできる場所があるのか、という問題だ。

米海軍並みに最大射程200ノーティカルマイルを目指すとした場合、東京から西に向けて撃った弾は名古屋より先に着弾する。わが国にそんな広い射場はない。太平洋上で試射する場合、事前に通告を出して航行禁止海域を設定しなければならないし、そこに某国の情報収集艦が入り込まないようにするという厄介な課題もある。

そのことと、いきなり大出力のレールガンを開発することの技術的困難(米軍では10年以上前から取り組んでいるのだ)を考えると、いきなり大型・長射程のレールガンを目指すのではなく、もっと小型・低出力のものから始める方が現実的であろう。

もちろん、技術的な制約に加えて、予算という問題もある。レールガン以外にもいろいろな研究開発計画が動いているから、レールガンだけで予算を独り占めできるわけではない。

そこで五月雨式に予算を投入して時間をかけすぎたり、完成した頃にはもっと使えそうな新技術が出現していたり、完成はしても搭載できそうなプラットフォーム(艦や車両)が見当たらなかったり、ということになったのでは洒落にならない。

また、そのレールガンを実任務に際してどう使うか、という運用コンセプト作りも重要である。ウェポン・システムの開発はみんなそうだが、まず「どういう想定脅威に対してどう対処するか」という運用コンセプトが起点となるべきものである。

井上 孝司 軍事研究家

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いのうえこうじ / Koji Inoue

1966年静岡県出身。1999年にマイクロソフト株式会社(当時)を退職して著述業に転じる。現在は、得意の情報通信系や先端技術分野を主な切り口として、航空・軍事・鉄道関連の著述活動を行っている。主な著書に「戦うコンピュータ2011」「現代ミリタリー・ロジスティクス入門」(潮書房光人社)、「ドローンの世紀」(中央公論新社)などがある

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