成果を出す人は「緊張度」を使い分けている 銅メダル・卓球女子勝利のカギもそこにある
脳科学的にも、脳は緊張しすぎると、緊急事態だと認識し、防衛・闘争反応がでてしまいます。逆にリラックスしすぎても、だらけてしまう。その中間「適度な緊張」状態になると、創造性・柔軟性などが向上します。
今回のリオ・オリンピック代表選手のなかでも、実力は申し分なく、「メダル獲得確実」と期待されていたのに、本番でうまく実力を発揮できなかった選手もいます。そこにはこの緊張の問題が大きく関係しているといって過言でないはずです。
試合中に、脳の逃走・闘争モードが発動されると、身の危険を避けるために、目の前のことだけに集中するモードに、自動的に切り替わってしまいます。これは、「脳の自己防衛本能」ともいうべき「火事場の馬鹿力」で、一時的にパフォーマンスがあがることもあります。ですが、卓球の団体戦のように数時間にわたる試合で、ずっと緊急事態モードを維持することはできないので、結果として集中力が切れたり、ミスを連発したりして負けてしまうのです。
これに対して、オリンピック本番でリラックスしすぎても、集中できないので、実力は発揮できません。過度な緊張とリラックスの中間「適度な緊張」状態になると、創造性・柔軟性などが向上します。「周りがよく見えている」「ピンチに冷静に対処している」「リカバリーが早い」「冷静な判断ができている」などというときは、「適度な緊張」状態になっています。
実は、このベストパフォーマンス発揮のための「適度な緊張度」は、人によって、みんな違うのです。卓球女子団体の3人は、各自が本人にとって適度な緊張状態で試合に臨めたからこそ、実力を発揮できたと言えます。
「適度な緊張度」は、人によって、みんな違う
ある団体競技のメンタルサポートをしたとき、「理想の試合直前の過ごし方」をメンバー間で共有したことがあります。全員が、お互いの違いにビックリしていました。
メンバーと雑談することで緊張を緩める人。大好きなアーティストの音楽を聴くことで、自分を奮い立たせ緊張度を高める人。試合中と変わらない程度のアップをすることで、緊張を緩める人。1人で自分の内面と対話することで、緊張度を緩め集中力を引き出す人……。実にさまざまだったのです。