白川・日銀新総裁、難問山積にどう挑む

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 預金金利は引き続き著しい低水準だが、物価がほぼゼロ成長だったことで実質金利はプラスだった。だが、物価がハネ上がり、定期預金でも実質金利はマイナスという事態にならざるをえなくなった。国民貯蓄の観点からは利上げによる実質金利のプラス化が要請される筋合いにある。

ところが、日銀が『中期展望レポート』で示してきた「生産、所得、支出の好循環的メカニズム」という景気拡大プロセスがぐらついている。トータルベースでは勤労者の所得は一向に増えない。生活防衛意識の高まりを反映して、個人消費がさらに弱含みとなりかねない様相を呈している。その場合、金融政策は利上げなのか、利下げなのか。

景気が後退しても深刻な国家財政の悪化の中では財政出動は期待できない。むしろ、消費税率引き上げがちらつく。いずれ、税率引き上げは避けられないだろうが、現在のような経済環境下では歳入改善による財政出動があっても、税率引き上げによる個人消費の悪化効果のほうが大きくなりかねない。流動性の罠ならぬ、財政赤字の罠だ。いきおい、金融政策に利下げのプレッシャーが増すことになる。

財政上の問題はそれだけではない。下手をすると、税収不足で歳入欠陥という事態にも陥りかねない。穴埋め手段は国債発行しかない。この間、発行額が抑制されてきた新規国債の増発となれば、需給バランスが揺れて長期金利に響く。

金融面では、地方の景気悪化に伴って、中小金融機関の経営に不安感も増している。日銀流にいえば、プルーデンスの問題が取り沙汰されかねない。

ひるがえって、米国ではサブプライム問題に端を発した金融の混乱劇が実体経済の悪化へと発展して、危機は標準シナリオどおりに深化し続けている。そこでFRBは利下げを連発してきたが、ここにきて利下げにブレーキがかかりそうな雲行きとなってきた。

景気の持ち直しを想定しているともいえるが、インフレ懸念とドル危機の表面化を意識しているともみえる。ポールソン米国財務長官が「米国は強いドルを求めている」と言っても、今の国際金融市場にはその声を受け入れるムードは乏しい。実際、一向に強いドルとならない中で、欧州諸国はユーロ高に堪えかね始めている。

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