戦場のレバノン人エリートが悟った本当の幸せ フランスINSEAD突撃取材(上)

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ベクテルは建設業界のゴールドマン・サックス

ベクテルには国際的で文化的にも極限に挑戦する文化がある。フーバーダムを造ったのもベクテルで、国際的に名声の高いプロジェクトを幾多もこなしてきた。イギリスは古いインフラが多く、世界で最初の鉄道のリノベーションなど再投資需要で仕事も多い。

ジョーにとって、ベクテルで一番思い出深かった瞬間は、セントパンクラ(ユーロスターの駅で、ロンドンとパリを結ぶ)の開通記念日だ。2007年10月の記念イベントの模様はイギリス中にテレビ中継され、会場にはエリザベス女王やトニー・ブレア英首相も参列した。

当初、このプロジェクトはイギリス国内企業が担当していたものの、ずさんな運営で工期が2年遅れ予算も20億ドル超過してしまった。そこで、ベクテルがピンチヒッターとして登場したわけだが、アメリカ企業がイギリスの公共プロジェクトに入ることに懐疑的だった。「イギリスには最高のエンジニアがいるのになぜアメリカ人を呼ぶ必要があるのか」という批判の声も強かった。公的なプロジェクトだけに世間の関心も大きく、工事で何か問題があるたびにメディアが大騒ぎする。しかしベクテルは周囲が不可能だと思っていたプロジェクトを最短の工期で完成させ、イギリス国内で大きな名声を手にしたた。

イギリス企業にできなかったことが、なぜアメリカ企業にできたのか。

その理由として、ジョーは法律と会社の文化の違いを指摘する。イギリスの建設関連の法律は、コントラクターを擁護するためにあるものが多いため、どうしてもコントラクターは甘やかされてしまう。

それに加えて、企業文化も違う。イギリス企業は工事中に問題があれば工期がずるずる遅れるが、アメリカ企業は時間通りに終わらせることに必死になる。なぜなら、工期通りに完成できるかどうかで、ボーナスや報酬が大きく変動するからだ。

そして米国では、コントラクターと下請け会社との契約も互いが利益を分けるようにできており、双方が最善を尽くすインセンティブが用意されている。そのため、関係者全員が自分自身の極限に挑戦する企業カルチャーが強いという。そんな企業文化とグローバル市場での圧倒的なプレゼンスを受け、ベクテル社員は自分たちのことを「建設業界のゴールドマン・サックスだ」と自負する。

※ 3月13日(水)の後編に続く

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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