リニア「大阪開業8年前倒し」は本当に必要か 自己負担での計画を国が支援するのはアリ?

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実際にJR東海のHPには次のような記載もある。

全幹法の適用により経営の自由や投資の自主性等民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、平成20(2008)年1月にその旨の回答を得ています

 

中間駅の設置についても、地元から駅建設費の全額地元負担について難色を示されるや、JR東海は、2011(平成23)年11月に、駅構造を極めて簡略化することを前提にJR東海が建設費を自己負担すると発表をしている。いくら簡略化したとしても当然億単位の負担増が見込まれる。

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リニア中央新幹線・南アルプストンネル山梨工区の工事現場(写真:小佐野景寿)

JR東海はそこまでしてでも、自分たちの使命や経営基盤確立のために中央新幹線を早期に建設し開業させたいということである。民間企業としてのこのJR東海の本気度は、その評価はともかくとして十分認識しておくべきであろう。

また、中央新幹線が国家プロジェクト的な意味をも有するとはいっても、平成28年3月期の連結売上高が1兆7300億円、連結営業利益が5000億円を超えるJR東海が自分たちの負担で建設すると言っているのに、国が資金を投入する必要はあるのかという疑問もある。

開業前倒しなら慎重な計画を

確かに、交通政策審議会の答申でも大阪開業の前倒しを継続して検討するべきとされてはいるものの、前倒しとなるとJR東海単体では厳しいであろう。しかし、国の資金調達能力にも当然限界もある。ないものねだりはできない。

さらにJR東海を中央新幹線の建設主体と営業主体に指名し、整備計画の決定と建設指示をするにあたっては、国においても当然工期や資金繰りなども吟味したはずである。国が後になって金を出すのは抑制的になるべきであろう。金を出せばやはり合わせて口が出る。

それでも地域や日本の発展にどうしても中央新幹線大阪開業の前倒しが必要というのならば、中央新幹線に対する国とJR東海の目的をすり合わせ、共通の認識とビジョンを具体的に示し、前倒しのための資金調達方法とその経済効果の積算、国やJR東海に過度な財政負担が生じないように慎重に計画を立てていくことが必要であろう。

かつて日本では、鉄道路線の建設が乱発され、その経営負担を国鉄が負わされ、国鉄の破綻につながった。中央新幹線を巡る問題が、国鉄の債務を引き継ぎつつ曲がりなりにも国鉄破綻後30年で確立されてきたJR東海の経営の基盤と自由を、そして国の財政規律を歪めないことを願っている。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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