アフリカで中国語ブームが起きているワケ 結婚して現地に根を張る中国人も

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15歳で中国で学業を終えた後、村の建設会社で働き始めた。外国で働けば給料が2、3倍になると聞き、1995年にクウェートへ。その後アラブ首長国連邦の中国系建設会社の建設現場で働いた後、12年前にエチオピアへ来た。ファンは経営者とはいえ現場に頻繁に足を運び、工事の質が保たれているかチェックをする。

中国東部の江蘇省の出身で元々色白だったが、長年の建設現場での仕事で肌はすっかり黒くなった。「中東にいたころはひどい人種差別を受けが、エチオピアではそのような扱いは受けない。幼稚園に通う上の2人の娘たちも友達から『白い肌が人形みたい』と言われ、とても愛されている」とほほ笑む。

「エチオピアは今では私のホーム」

現在、アディス市内に4階建ての家を建設中。昨年秋に中国に帰国した時にはオンラインで新居の家具や雑貨をすべて買ってきたという。家はすべて中国製の家具にし、中国スタイルにするという。「食事も初めは自分が中華料理を作っていたが、今では妻も見よう見まねで習得して餃子とか麺類などを作れるようになった。娘たちも中華料理は大好きだ」と話す。

「エチオピアは今では私のホーム。環境もいいし、エチオピア人もフレンドリーだしここは好きだ。恋しいものといえば、両親、友人、親戚や元同僚などと中国でしか食べられないぐらいだ。妻、娘たちもまだ中国を訪れたことはないが、子どもが大きくなったらいつか連れて行きたいと思っている」

アフリカの人口増加は驚くべき速さで続いている。現在のペースで増え続ければ、今世紀半ばに大陸の人口は倍の24億人になる。一方の中国は2050年に人口は現在よりやや減少することが予測されているが、今よりさらに経済的に豊かになり、国際的にも発言力を増し、アフリカでもさらに存在感を強めているだろう。

アフリカの人口が24億人になり今よりも豊かな層が大幅に増えた時に、今からアフリカに進出している中国はアフリカという巨大な消費マーケットに深く食い込んでいるだろう。中国が現在行っている多額な投資が実を結び、アフリカにおいて優位な地位を占めているかもしれない。それを世界はどのように見つめるだろうか。

(文中敬称略)

上野 きより ジャーナリスト、元国連職員

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うえの きより / Kiyori Ueno

ブルームバーグ・ニュース東京支局、信濃毎日新聞社などで記者として働いた後、国連世界食糧計画(WFP)のローマ本部、エチオピア、ネパールで働き、食糧支援に携わる。2016年から独立。慶應義塾大学卒業、米国コロンビア大学院修士課程修了。東京出身

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