束の間に終わる「アベノミクス再起動」の夏 市場は決して政策を好感していない

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日本の株価を上昇させるために打ち出した「金融緩和の強化」は、短期的には本来の目的である株価上昇をもたらさずに、海外投資家の円調達コストの上昇を通じて日本株の買い余力を抑え、国内金利の上昇と円高圧力を増すという副作用を生み出す結果となっている。

黒田日銀総裁は「緩和手段はいくらでもある」と強気の姿勢を見せ続けているうえ、安倍首相も「黒田総裁は現在の金融政策について、限界がきていることは全くなく、その時々で最も適切な政策を行う旨、発言されていると承知をしています」(3日記者会見)という認識を示している。

仮に「緩和手段はいくらでもある」というのが真実だったとしたら、「金融緩和の強化」と称して、何故アクセルとブレーキを同時に踏むような矛盾した政策を採ったのかという疑問が残る。

限界は「緩和手段」にとどまらない?

もし知らないでこうした政策を採ったのだとしたら、それは黒田総裁以下、日銀政策委員会審議委員が必要な能力を備えていないことになるし、知っていてこうした政策を採用したのだとしたら、それは「緩和手段がなくなって来ている」ことを表すものになる。

筆者は、個人的には、今回矛盾した政策を採用したのは、前者であった可能性が高いと考えている。それは、黒田日銀総裁が「金融マン」ではなく「行政マン」であるともいわれるように、現在の日銀政策委員のほとんどが金融の実務経験を持たない学者、証券会社のエコノミスト、銀行為替ディーラーなどで占められ、「金融」を完全に理解している人が少なくなったからである。

アベノミクスの中心的政策である「大胆な金融緩和」にとって、「緩和手段の限界」だけでなく、「審議委員の能力の限界」もボトルネックになってきていることには注意が必要だ。

アベノミクスが、金融市場からの信頼を取り戻す日は来るのだろうか。

近藤 駿介 金融・経済評論家/コラムニスト

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こんどう しゅんすけ / Shunsuke Kondo

1957年東京生まれ、早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、総合建設会社勤務を経て、31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。再び、野村アセットに戻ってからは、担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナーなど専門家向けセミナー等も開催中。自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は、個人投資家から圧倒的な支持を得る。

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