三菱重工、赤字客船が手離れしても霧晴れず 同業のIHI、川崎重工にも想定外の逆風

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一方、前期は複数の工事でトラブルが相次ぎ、期初に立てた最高益予想から一転して最終赤字に転落したIHI。今期は「緊急事態」対応でV字回復を狙うが、円高が逆風となり第1四半期決算発表時点で早くも通期業績予想を下方修正した。同社の業績下方修正は前期から数えて4四半期連続となる。

三菱重工と同様に、為替前提を1ドル110円から105円、1ユーロを125円から115円へ、円高方向に変更。これに伴い、通期業績予想を売上高1兆5200億円(修正前1兆6000億円)、経常利益440億円(同550億円)、最終利益220億円(同300億円)へ引き下げた。

IHIにはさらに下方修正の可能性も

ただしIHIの場合、下方修正要因は円高だけではない。前期に業績悪化を招いた資源掘削船建造工事で追加コストが発生しているほか、同建造工事遅延に伴い海外での建造に変更した後続船でも想定以上に費用がかさむなど、海洋資源関連が引き続き利益を圧迫している。設計や管理機能の強化など全社体制で改善に努めているが、工事採算がさらに悪化するようだと下方修正の連続記録更新が視野に入ってくる。

総合重機3社のうち、残る川崎重工業は通期業績予想を据え置いた。同社は前期、ブラジル向け海洋掘削船建造事業に関連して221億円の損失を計上。今期はブラジル関連の損失は一巡するものの、前期に稼ぎ頭となった航空機胴体、エンジン分担製造が円高の影響を受けるなど、期初の時点で経常利益は前期比25%減の690億円と、減益予想を立てていた。

通期予想を据え置いた要因は、期初の為替前提の1ドル110円、1ユーロ125円を見直さなかったためだ。しかし、円高進行に伴い第1四半期時点で為替差損が113億円発生している。今後は「コストダウンの徹底を図る」(太田和男・常務取締役)構えだが、足元の円高水準が続くようだと第2四半期決算発表時に、前提レートの変更に伴い通期予想を下方修正する可能性が高そうだ。

総合重機大手3社は、国内の設備投資が低迷する中、新興国向けインフラ整備や民間航空機の分担製造など海外案件の獲得に力を入れてきた。いわば、アベノミクス始動後の円安環境を満喫した業界だけに、急激に進む円高逆風下をどう乗り切るか。祖業、造船事業の見直しにメドが立ちつつあるだけに、今期は真の実力が問われる年になりそうだ。

山本 直樹 東洋経済 記者

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やまもと なおき / Naoki Yamamoto

『オール投資』、『会社四季報』などを経て、現在は『週刊東洋経済』編集部。

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