7月試算での2020年度の税収は、消費税率が10%となっても満年度化していない状況での税収で、その分税収が少なく、これが増税延期の影響として出ている。
それに加えて、2020年度のGDP(国内総生産)が伸び悩んで、税の自然増収がその分少ないことの影響もあろう。2020年度のGDPは、1月試算では592.0兆円とみていたが、7月試算では582.7兆円と推計している。つまり、約10兆円も2020年度のGDPは低い値になると見込んでいる。これに連動して、所得税や法人税の収入は少なく見積もられて、前述のような結果に反映されたと考えられる。このことからも、「経済成長が促されたから2020年度の財政収支は改善された」とは言えないことがわかる。
歳出抑制の効果として1.7兆円
それでも、2020年度の基礎的財政収支赤字は、7月試算で1兆円も改善したのはなぜか。それは、歳出抑制の効果が1.7兆円あったからである。税収等が0.7兆円減少したものの、国と地方の歳出(公債費除く)が1.7兆円減少したことにより、基礎的財政収支は1兆円改善した、というわけだ。
歳出抑制の効果は、次のように現れる。1月試算では、2015年度の歳出決算はまだ出ていない。その上、2017年度の予算編成方針も決まっていない。しかし、7月試算では2015年度の歳出決算が出て、「骨太の方針2016」で2017年度の予算編成方針が示され、引き続き歳出抑制の方針を維持するとした。他方で、2018年度以降は未定なので、7月試算でも2018年度以降の追加的な歳出抑制の効果は含んでいない。
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