温泉に近い病院なら、地域のホテルや旅館と提携した家族向けのサービスを提供できるでしょうし、海のそばにある病院なら、海水浴や釣りといったレジャーを楽しめる施設が喜ばれるかもしれません。歴史や文化のある街なら、日本の伝統文化に触れる機会を設けることもできるでしょう。
海外で病院の株式会社化、上場会社化は珍しくない
このように、医療技術だけではなく、患者やユーザーの視点でサービスを提供していくことが、成功のカギとなるのではないでしょうか。これまでの医療の業界は、農業と同じく競争がない業界でした。収入の大半を保険料や税金で賄っているため、ぬるま湯体質にあり、基本的には合理化やサービスの質の向上といった発想には疎かったのです。
したがって、医療ツーリズムを成功させるための第2のポイントとして、病院を株式会社化して、徹底した経営強化と合理化を行う必要があると考えています。病院が株式会社化して利益を追求するようになると、患者へのサービスが落ちるという意見がありますが、これは完全に間違った見解です。むしろ、海外を中心に、株式会社となってサービスの質が上がり、世界中から患者が来るようになったという例が数多くあります。
病院の経営努力については、日本の先を行く東南アジアの病院に学ぶべきところが多いでしょう。例えば、マレーシアのIHHヘルスケアの病院経営は、これからの日本の医療産業にとって非常に参考になるでしょう。IHHヘルスケアは、クアラルンプール証券取引所などに上場もしているアジア最大の民間病院運営グループです。市場から約1500億円もの資金を調達し、それを元手に、アジアや中東などの新興国で富裕層向け医療サービスの拡充をはかっています。
また、タイのバムルンラード国際病院は東南アジア最大級の病院ですが、海外からの患者の受け入れが増加傾向にあり、業績も絶好調な状況にあります。2008年リーマンショック後の世界的な経済危機にあっても成長を続ける医療産業は、今や不況に強い産業の代名詞となっているのです。
日本の病院もこれらのアジアの病院から、経営ノウハウを大いに吸収していく必要があるでしょう。
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