まずは放射線治療に特化せよ
ただし、施す医療については、東南アジアとの競合は避けたほうがいいと考えています。まずは、日本が先頭を走っているがんの放射線治療の分野などに特化し、そこで勝負をするべきです。
もちろん、ノーベル賞を受賞した山中伸弥京都大学教授が研究を進めているiPS細胞を使った再生医療も有望な分野ですが、実用化までには20年はかかると言われている医療だけに、医療産業の成長のためには放射線治療に先陣を切ってもらうのがいいでしょう。
放射線治療を中心とした先端医療は付加価値が高く、アジアのライバルたちとの差別化ができます。切らない医療として、放射線治療が一部で普及してきていますが、放射線の一種である中性子を使ってがん細胞を治療する「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」と呼ばれる次世代のがん治療が確立されれば、この治療を受けたい患者が国内外を問わず殺到するだろうと思われます。
ホウ素中性子捕捉療法が優れているのは、陽子線や重粒子線などの先端治療と比べても、がん細胞だけをピンポイントで狙い撃ちすることができ、がん細胞周辺の正常な細胞への影響が最も少ない点です。この治療法が普及すれば、世界中から富裕層や中間層が日本へ治療に訪れることとなるでしょう。そのために国が主導して、日本では圧倒的に足りない放射線医師や技師を積極的に養成し、大幅な増員をすることも忘れてはなりません。
気をつけるべきは、収益源となる独自技術を決して公開しないことです。放射線治療は照射技術や画像解析技術が中核の技術になりますが、少なくとも使う機器のブラックボックス化された技術に関しては、知的財産の管理が重要となることは間違いありません。
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