ここで求められるのが、「先端医療を外需に転嫁する」という発想です。
たとえば、タイの病院を訪れた人は、まるで高級ホテルみたいだと一様に驚くと言います。タイは医療ツーリズム先進国で、年間100万人もの医療観光客を受け入れています。これに対し、日本は1万人足らずと、完全に出遅れているのが現状です。
世界的な健康・長寿への関心の高まりもあって、医療ツーリズムの市場規模は8兆円に達するという試算もあります。日本の先端医療の技術があれば、海外の富裕層や中間層を対象に、医療ツーリズムで外貨を稼ぐことは難しいことではありません。
医療はサービス産業になる必要がある
ただし、そのためには、いくつかの改善すべき課題があることも事実です。
まず第1のポイントは、医療ツーリズムを単なる医療サービスとしてだけではなく、医療を超えたサービス産業としてもとらえる、という視点を持つことです。日本人は本質を追求することには熱心な一方で、それを少しでも外れたことには関心を持たない傾向があります。この傾向は製造業において象徴的であって、代表的な例では、家電メーカーが製品の機能や品質向上には大変な熱意を注ぐ一方、デザインやブランド価値など、技術以外の面を疎かにするという失敗をしてしまったことが挙げられます。
医療ツーリズムも、医療産業としてだけではなく、観光の要素も取り入れたサービス産業であるという考え方が大切です。たとえば、先端の医療技術や医療設備を揃えるのはもちろん、長期療養で滞在している患者や海外からお見舞いにやってくる家族や友人のために、さまざまな娯楽用の施設を整えることは、大きな付加価値を生み出すことになるでしょう。
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