「椿山荘」衣替えに懸ける藤田観光 脱フォーシーズンズが復活の第一歩に

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一方、今13年12月期の増益要因は、前期にあった一連の悪影響がなくなることが大きい。中国人客も徐々に回復が見られ、円安傾向から外国人客全般の回復機運が高まりつつある。

円安については日本から海外への渡航客に冷や水をさす懸念はあるが、逆に日本人を対象にした国内観光にとっては追い風となる。暦の関係で3連休が例年より多いことに加え、株価上昇による資産効果が手伝って高齢者を中心に国内観光需要が強含むと期待されるからだ。

藤田観光は、椿山荘と旧フォーシーズンズを統合したホテル椿山荘東京の始動で、宴会場、婚礼とホテルの一体PRがやりやすくなった。一体運営による効率改善もあり、ワシントンホテルなど他ホテルを含めた全社集中購買による経費抑制もさらに推進していく。

ホテル椿山荘東京は、「客室料金はフォーシーズンズ時代と変わらない水準だが、かねてから同レベルのホテルより高くならないようにしている」と会社側は説明する。出足はまずまずのもようで、同業他社からは「衣替えの効果もあるのか、客がホテル椿山荘東京に流れている」との恨み節も聞かれる。

海外進出にらみシンガポール拠点も

椿山荘のリブランド戦略が一服したことを受けて、藤田観光は海外戦略についても本腰を入れ始めている。今春にも、海外4拠点目(ソウル、台北、上海に続く)となるシンガポール駐在員事務所を開設する予定だ。

シンガポールの新拠点では、当面は現地からの訪日観光客の取り込みに注力するが、同時に現地および周辺ASEAN地域におけるホテル運営などの事業性調査にも乗り出す。

既存の3拠点を含め、今後はアジアでのホテル運営受託やM&Aの可能性も出てきそうだ。

(写真はホテル椿山荘東京の遠景、撮影:尾形 文繁)

山川 清弘 東洋経済『株式ウイークリー』編集長兼「会社四季報オンライン」副編集長

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やまかわ きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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