伊藤忠は、本当に「不正会計」をしているのか 米国空売りファンドの幹部に真意を直撃

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――グラウカスの調査レポートに対して、伊藤忠は7月27日、2つのリリースを出している。1枚目で「当社の見解とは全く異なる」と全面否定し、2枚目で論点となる3項目の反論をしているが、これに対する見解はあるか。

先ほど(=28日午後に)発表した、伊藤忠の見解に対するわれわれのレポートをご覧いただければと思う。

以下、レポートからの抜粋を掲載する。

 

指摘する問題点を検証するべき

われわれはレポートの中で、伊藤忠の財務諸表と開示情報の44ページにおよぶ詳細な分析を示し、コーポレート・ガバナンスや会計方針を巡る複数の問題点を指摘している。同日、伊藤忠が発表した形式的な1ページの通知は、あまりに短く、通り一遍のものであり、われわれのレポートが挙げた問題点に対する意味ある対応とはなっていない。

伊藤忠は再三にわたって、有限責任監査法人トーマツ(DTT)の陰に隠れ、DTTから連結財務諸表は「適正であるとの監査意見を取得」している、と繰り返すことで投資家を安心させようとしている。しかし、著名な監査法人が伊藤忠の財務諸表の適正性を表明していることは、同社が不正会計事件に巻き込まれないことを保証するものではない。

新日本有限責任監査法人は、東芝に対して無限定適正意見を表明したが、東芝の不適切会計を見過ごしたことによる重大な義務違反があったとして、日本の規制当局に21億円の課徴金を課されている。有限責任あずさ監査法人は、オリンパスの財務諸表について無限定適正意見を発行している。米国史上最大級の企業不祥事を引き起こした米エンロンの財務諸表についても、著名な会計士事務所であったアーサー・アンダーセンが無限定適正意見を表明していたことが注目に値する。

さらにDTTは、不適切会計の検知にかけて、最高の評判を有しているわけではない。DTTは、香港に上場するChina Metal Recyclingの監査人を務めたが、われわれは2013年にこの企業の詐欺行為を暴いている。要するに、著名な監査法人による無限定適正意見は、不正会計に対する防御手段にはならない。それゆえわれわれは、伊藤忠が独立した調査委員会を指名し、独立法人によって、財務諸表の完全性、および、われわれの詳細なレポートが指摘する問題点を検証するべきである、と確信している。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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