「子どもが中学生になると、どうしても食費はかかるので、買い物はもうすごく気を使う。安い店でしか買いません。コンビニは一度も使ったことがないですし、家族全員で外食もしたことありません。気をつけているのは、日々、無駄はしないことと、買い物する時間ですね。スーパーなら18時半すぎ。お肉でもお魚でも半額シールが貼ってあるものだけ。それは私だけではなく、団地のお母さんみんながしていること。子どもも半額食材を買うのを見て育っているので、自分でも半額シールのものをちゃんと買ってきます」
世帯の家計をみてみよう。手取り給与は月12万円。家賃&駐車場で月2万円、光熱費月1万5000円、定期代月1万2000円、携帯代3000円×2台。残った6万7000円に加えて児童手当2万円、児童扶養手当5万円、そして2年前から高校3年の長男はアルバイトして2万~3万円を家に入れてくれている。長男の援助を含めて、月15万7000円で家族4人は暮らす。子ども3人の生活保護受給額は、おおよそ18万円だ(母子世帯子ども2人の生活扶助基準額の例、厚生労働省ホームページより)。暮らしは生活保護水準を下回り、現在6人に1人と言われる子どもの相対的貧困率にも完全に該当する。
「今の時給1000円のパート事務も、1年前に探しに探して1000円です。それまでずっと850~900円くらいだったから、もっと生活は厳しかった。ハローワークは44歳以下で区切りがあって、私は45歳なので多くの仕事は応募する資格すらありません。正社員とか、手取り20万円をもらえる仕事は皆無です。求人数はたくさんあっても、ほとんどが850~900円の非正規。さらに年齢的に厳しいので、収入は一生このままか、もっと低くなるかも。今、中学1年生の下の子が中学を卒業すれば、夜にダブルワークはできるかもしれないけど、今は息つく暇さえないくらい忙しい。シングル家庭の限界です」
洋服はリサイクルショップでしか買わない
彼女は紺のジャケットとスカートを着ていた。通勤着である。サイズは若干小さく、心なしか袖が短い。近隣の国道沿いにあるリサイクルショップで、400円で購入したものだ。多少のサイズ違いは目をつぶる。
「本当はキッチリしたサイズのものを着たいけど、洋服関係は500円を超えると買えないので仕方がないです。私は3人もいるからどうしてもダブルワークは無理だけど、団地のシングルのお母さんたちは、ダブルワークが多い。母子家庭は正社員で働く人は少ないから、平日と休日に仕事を持つか、昼間と夜の仕事を持つか。だから、同じ団地のシングル家庭同士で協力し合います。たとえば病気、伝染病で学級閉鎖になったとかであれば、“今日休みだから、うちで子どもを見るよ”とか。それと制服とか洋服は、基本的にお下がり。ランドセルとか中学校の制服は、団地をぐるぐるぐるぐる回っています。新品を買ってあげたいけど、どうしても買えないのです」
県営団地には、80近い世帯が生活する。同じ小学校に通う子ども同士が仲良くなって、シングル家庭同士で家族ぐるみの付き合いとなる。進学費用に制服や学用品をそろえなければならない子どもの中学、高校進学はひとつの壁だ。なんとか最低限の出費で済ませたいと、団地内で必死に“制服が欲しい”と声をかける。
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