45歳シングルマザーが抜け出せない貧困地獄 子持ちで離婚したらどうしてダメなのか?

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「うちはいちばん下が中学進学だったので、なんとか指定のカバンと学ランはもらえました。新品は6万~7万円もしますから。それと真ん中の娘が着ている中学の制服は、今は違う棟の小学校6年生の女の子にあげる予定です。直接はやり取りしていないけど、人づてで“欲しい”って人にあげます。そうやってみんなで協力しながら、子どもの進学は乗り切る。進学して普通に通学させる、もう、それで精いっぱいなんです」

JR駅からバス20分という立地だ。団地の周辺は何もなく、ベンチに座って話を聞く。中学1年生の次男が帰ってきた。村上さんは「夕飯置いてあるから。2~3時間で戻るね。お姉ちゃんにも言っておいて」と声をかけていた。次男が持つ黒い革製のカバンは、使い込まれてボロボロだった。

「次男は、何がおカネかからないか自分で調べて、部活は陸上をやっているみたい。好きなことをさせてあげたいけど、やっぱり無理なので子どもがそう気を使ってくれるのは正直助かる。長男は学費のかからない県立の職業訓練系の高校に進学して、中3の長女は高校行かないで働くって言っています。長女には“公立だったら高校いいよ”って言っても、働くってクビをふる。昔の団地なので、家はすごく狭い。長女は早く働いて家を出たいって意識があるみたい。長男は週5アルバイトして2万~3万円を入れてくれて本当に助かっています」

高校進学率は95.8%(学校基本調査2015年)。日本では40年間以上、9割を超える子どもたちが高校に進学する。長女は就職先をどうするか、これから担任と話し合うようだが、どうしてその選択になったのだろうか。

貧困家庭の子どもは高学年で落ちこぼれる

「子どもの学力とか進路は、シングルとか貧乏のせいにしたくないけど、やっぱり関係があるとしか言いようがありません。私も長女、次男のときに悩んで、いろんな人に相談しました。うちだけじゃなくて、団地の子たちは小学校高学年くらいから学校の授業についていけない、勉強についていけなくなるんです。普通の家庭の子は、公文とか塾に行くんですよ。でも、そんなおカネはない。特にダブルワークするお母さんたちは、夜家にいないわけです。家で勉強する習慣は、もちろんないですよね。食べさせるだけで精いっぱいで、勉強まで手が回らない。だからシングル家庭の子どもは、よっぽど理解力がある子じゃないと、勉強についていけなくなるんです」

無事に高校へ進学しても、新品の制服やカバンを買えなかった団地の子どもたちの多くは中退してしまうという。

「どこか高校へ滑り込んだとしても、今度はアルバイトするじゃないですか。アルバイトが大変で、朝起きられないで高校行けないとか、それでもっと授業が遅れちゃう。ついていけなくなれば、高校はもう赤点取るとダメじゃないですか。中学までは勉強ができてもできなくても、学年は上がっていくけど、留年になるなら辞めちゃうとか。その後は大抵フリーターです。それか非正規の工場とか介護施設とか。そうやって貧困が子どもたちに連鎖しちゃう。それが現実です。うちの長男は本当に頑張っているほうだと思う」

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