遠藤功「北の革命児・コープさっぽろ」 ニッポン中堅企業の秘めたる爆発力

拡大
縮小

「食のインフラ」を目指すコープさっぽろは、北海道の農業の活性化にも意欲的に取り組んでいる。国の減反政策や米需要低下の影響によって増えた休耕田の活用を検討。道内生産者と連携し、飼料用の米の栽培に着手した。

この米を与えた鶏卵や豚肉、牛乳などを「黄金そだち」のブランドで販売している。この取り組みは食料自給率の向上に寄与すると評価され、フードアクションニッポン大賞を受賞した。

コープさっぽろの取り組みは、きわめて野心的であり、挑戦的である。大きく変化する時代環境に適合した新たなビジネスモデルを構築するのだという思いが、新機軸をドライブさせている。

拡大路線で失敗、破綻からの復活

大企業をも凌駕するような革新的な取り組みを進めるコープさっぽろであるが、その歴史はけっして平坦なものではなかった。バブル崩壊後に、「北海道のメインバンク」と呼ばれた北海道拓殖銀行が破綻。同時に、コープさっぽろも経営危機に陥った。

バブル時には拡大路線を突っ走り、食品のみならず衣類や家電、インテリアなども揃えた4000坪の大型店を出店させたり、農場やホテル、ラーメン店経営など多角化を進めた。こうした事業拡大は金融機関からの借入金に依存し、当時1500億円ほどの事業規模に対して借入金は930億円にも膨れ上がった。

自立再建不能に陥ったコープさっぽろは日本生協連合会の支援を仰がざるをえなかった。200億円以上の資金が注入され、理事長も派遣された。正規職員450人、パート1000人がリストラされた。残った職員たちも給与カット、ボーナス不支給、休日削減を強いられた。まさに「去るも地獄、残るも地獄」の様相だった。事業にも大胆にメスが入れられ、不採算部門や赤字店舗は縮小・整理を余儀なくされた。

こうした厳しい状況からの再生を陣頭指揮し、新生コープさっぽろを牽引しているのが、現理事長の大見英明氏である。破綻当時、リニューアル本部長として店舗事業の再建を担い、2007年に理事長に就任した。

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