遠藤功「北の革命児・コープさっぽろ」

ニッポン中堅企業の秘めたる爆発力

大見理事長は生協の原点に戻り、「おいしいお店」をキャッチフレーズに食品スーパーに特化することを決断。一貫性がなくバラバラだった店舗は標準化を進め、効率的な運営を推し進めた。

食にこだわり、食材の吟味や自社ブランドの開発にも積極的に取り組んできた。高齢者、子育て世帯、独身世帯など生活スタイルの変化に合わせた商品開発にも力を注いだ。こうした取り組みが功を奏し、経営破綻からわずか2年で経常利益がプラスへと転じたのである。

組合員の声に耳を傾け、職員のアイデアを吸い上げる

大見理事長は現場を重視し、組合員や職員の意見に真摯に耳を傾ける努力を続けている。組合員の声を聞く「コープDEトーク」という会合を道内130会場で実施。約1500名の組合員が参加し、様々な意見、要望が寄せられている。

毎年元旦には職員の気付きやアイデアを吸い上げる「かいぜんカード」を実施している。2012年には9823枚ものカードが集まった。こうした現場の知恵やアイデアが商品や店舗、サービスの改善につながっている。

その一方で、大見理事長は経営破綻という地獄に舞い戻らないために、職員ひとり一人のさらなる奮起を促す。経営破綻の理由は経営者の放漫経営だけが原因ではなく、組織全体がぬるま湯につかっていたからだと考えているからだ。

その考えは人事評価の仕組みに表れている。コープさっぽろにおける人事考課はABCの3段階に分かれる。A評価は全体の15%で、給与がアップする。B評価は全体の70%で、現状維持。そして、残る15%がC評価で「降格・減給」の対象となる。

15%が降格・減給というのは生協という組織には似つかわしくないと思うほどシビアなものに映る。しかし、こうした厳しい評価の仕組みがあってこそ、人は発奮し、当事者意識を持つようになる。「やっても、やらなくても同じ」という旧来の横並びの仕組みが、組織の沈滞化を招き、多くの日本企業で「ぶら下がり社員」を生み出してきたのも事実だ。もちろん、たとえ降格になっても敗者復活の道は用意されているし、現場で頑張っている職員やパートをきめ細かく褒める仕組みも数多く用意されている。

中堅企業が大企業と同じことをやっていたのでは、勝ち目はない。一体感を保ちつつ、組織に緊張感と危機感をいかに醸成させるか。人のマネジメントにおいても、コープさっぽろは独自の挑戦に踏み出している。
 

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