バーベキュー人気は「料理の娯楽化」の象徴だ 日常食と非日常食の二極化が進んでいる

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古来、人々の生活は「ハレ」と「ケ」に分かれ、その差は非常にはっきりしていた。「ケ」とは労働に従事する普通の日々(=日常)で、ここでの食事は空腹を満たすためであり、特別なものを食したりはしない。いっぽう「ハレ」とは、年中行事や通過儀礼などが行われる地域社会や個人にとって特別な意味をもつ日のこと。労働をせず、儀礼に参加し、晴れ着を着用し、ごちそうを食べる。そして、ここでのごちそうは、日常に供されない、「手間がかかるもの」であったり、「高価なもの」であったりした。そうした「ハレ=非日常」というものを存在させることで、単調な「ケ」の日々に変化をつけて、我々の先祖は暮らしを豊かに彩ってきたのである。

忙しい現代。料理の時短化、合理化が進んでいることはさまざまな調査やデータで証明されており、私自身もこの連載で指摘してきた。空腹を満たすあるいは栄養を補給するための日々の食事は、少ない食材で、時間で、手間で、費用でと、時短化・合理化が進んでいる。そこには、料理プロセスを楽しむ心の余裕はなかなか見当たらない。

人生に彩りをもたらすハレの日ごはん

一方で、休日など特別な日の料理は、プロセスそのものを家族や仲間と共有して楽しむ、普段とは異なる華やかなごちそうを味わうという料理の娯楽化が進んでいる。バーベキュー同様、クックパッドでは、おもてなし人気は根強く、またハロウィン、クリスマス、バレンタイン、ひな祭り、恵方巻き(節分)、七夕……といった季節行事に関する検索頻度は年々増える一方だ。日常食と非日常食の二極化が進んでいるのである。

中食、外食が増え、リーズナブルかつ便利になる中で、人々の家庭での料理(調理)離れが指摘されて久しい。しかし(もしかしたら、だからこそ)、人々は非日常シーンで、料理をイベント化し、娯楽として、料理プロセスや仲間との食体験共有を楽しむようになっている。そして、昔の人々がハレの日ごはんによって、暮らしを豊かにしていったように、こうした料理の娯楽化が、何気ない日常に変化をもたらし、生活、そして人生に彩りをもたらしていくのかもしれない。

草深 由有子 クックパッド編集長

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くさふか ゆうこ / yuko kusafuka

クックパッド編集長。生活情報雑誌、料理雑誌の編集を経て、2013年クックパッドに入社し2015年より現職。現在、小学3年生の息子をもつ母親でもある。クックパッド編集部は、いま知っておきたい注目の料理情報や人気のレシピ・トレンドを紹介する「クックパッドニュース」の配信などに携わっている。 

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