アメリカは「安倍外交」を歓迎するのか?

スタンフォード大学・ダニエル・スナイダー氏に聞く(上)

結局、戦前期には「大日本主義」が優勢になった。それが中国侵攻と対米開戦という大失敗につながり、日本は敗戦を迎えた。

戦後になると、この論争はほとんど影を潜めた。日本は米国に負け、米国に占領され、米国の戦略目標に従う形で再建の道を歩んだ。これが吉田ドクトリ ンの神髄であり、日本にとっても幸福な選択だった。日本は、米国による安全保障の保護の下で、経済大国として自らを立て直すことができたのだ。

ダニエル・スナイダー
スタンフォード大学アジア太平洋研究センター副所長
専門はアジアにおける米国の外交・安保政策、日本と韓国の外交政策。コロンビア大学卒(東アジア史専攻)、ハーバード大学ケネディ行政大学院修士。クリスチャン・サイエンス・モニター紙のインド特派員、東京特派員、モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者、コラムニストを経て、現職。日本、中国、韓国、台湾、米国の歴史教科書を徹底比較した「分断された記憶と和解」プロジェクトを担当する

戦後の大部分の期間を通して、日本のリーダーたちは戦前期のリベラル国際主義を引き継ぎ、おおむね一貫してその見解を支持してきた。

吉田ドクトリンは、国内でつねに左派と右派双方から批判されてきた。そうした人々は、「日本は戦後の対米依存から脱却すべきだ」「米国が作り上げた戦後秩序が、日本が主権と自立を主張することを妨げている」と訴えた。

私が見るところ、安倍首相は、吉田ドクトリンに批判的な保守系ナショナリストの立場にある。安倍氏のこのような思想は、祖父の岸信介から受け継いだものだ。一方、鳩山由紀夫元首相の場合は、おおむね祖父の鳩山一郎の思想を受け継ぎ、石橋湛山の「小日本」の考え方にも近く、そこに従来からの日本の左派の要素がいくらか混じり込んでいる、といったところだ。

鳩山氏に近い立場の人々は、日本のアジア回帰を重視する。そして反米主義の色彩が混じっている。これもまた、いろいろな意味で、日本に以前から存在していた主張であり、冷戦終結後、よりはっきりとした形で再浮上してきた。しかし残念なことに、この見解は以前と比べて創造性に乏しい。

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