ソニー、一見「堅調」も実は「苦境」 3四半期連続黒字の裏側

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、損益も悪化している。エレキ5分野の損益回復は期初目標だった黒字化を果たせず、一定規模の赤字が残ってしまう見通しだ(第3四半期累計の赤字額は179億円、通期見通しは非開示)。前12年3月期の赤字(第3四半期累計で1267億円の赤字)より縮小はしているものの、持分法損益など前期にあった特別な影響を除外すれば、損益改善は小幅だ。

資産売却で穴埋め

にもかかわらず、通期業績予想を据え置くことができたのは、エレキ5分野の収益見通しの切り下げにあわせるように、資産売却を実施しているからだ。「今期は資産売却をしながら収益支えていく、と申し上げた。利益を出すために売っているという面もあるが、2つ重要な点がある。1つには、こうしたアセット売却を通じて事業ポートフォリオの組み換えをやっている。また、財務体質の面で前向きに投資するための資金を確保する意味もある」(加藤優CFO)。

第2四半期にはケミカルプロダクツ部門の売却益82億円を営業益に計上(ソニーはSEC基準。資産売却益は営業利益に計上している)。第4四半期はニューヨーク本社ビルの売却により、売却益6億8500万ドルを計上する。1ドル90円で換算すれば、ニューヨーク本社ビルの貢献度は616億円にものぼる。円高是正も170億円の増益要因になる。これだけ、ボーナスがあるにもかかわらず上方修正を行えないということは、それだけエレキが苦戦しているということだ。

ソニー株は構造改革が好感されて人気が過熱したが、決して楽観できるような状況ではない。テレビ事業の赤字脱却や、「エクスペリアZ」を武器にしたスマホの世界シェア拡大、ゲーム事業の縮小に対する歯止め、といった課題が山積みだ。これらにに対して早期に成果を示してこそ、ブランド復活に向けた第一歩が始まるといえるだろう。

(撮影:今井 康一)

山田 俊浩 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事