都知事選が「三つ巴」になってしまった理由 「後出しジャンケン」は「ずるいやり方」か

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しかし、ラテラルシンキングはまったく別の考え方をする。この場合は、たとえば「ヘリコプター」を使って最速で行けないかという手段を探る。可能性や現実性はさておき、「できるだけ早く着く」という目的に合ったアプローチを探すという発想なのである。

鳥越氏と小池氏のラテラルシンキング戦術

さて、本題である都知事選に入ろう。

今さら言うまでもないのだが、選挙で政治家を選ぶのは「素人」だ。オリンピックで新体操やシンクロナイズドスイミングなどの競技を審査するのは、専門知識を有した審査員だし、文学賞や絵画コンテストで候補作を評価するのも、作家や画家などその道のプロである。ところが有権者であるわれわれは、政治のプロでもなんでもない。

候補者が掲げた公約の妥当性や現実性を吟味して投票するのは望ましいことだが、ほとんどの人はテレビや新聞、ネットに頻繁に取り上げられる人を選ぶだろう。だから、メディアをうまく利用した者が選挙戦を制するのだ。

展開次第では与党が推薦する増田氏が圧倒的に有利に運んでいたかもしれない。そうならずに、今回の都知事選が「三つどもえ」になってしまったのは、鳥越氏も小池氏もツボをよく心得ているからであろう。

鳥越氏は、多くの候補者の名前がマスコミで取りざたされ、小池氏や増田氏が立候補を表明した後、満を持して決断したかのように出馬を表明した。完全に「後出しジャンケン」なのだが、これで大いに注目された。その戦略を「汚い」「卑怯だ」という向きもあるが、強烈なインパクトを与えて勝利できるなら、ラテラルシンキング的には十分「あり」だ。

それだけではない。鳥越氏はがんによる闘病経験がある。普通ならこれは、選挙において「致命傷」にもなりかねないが、その点をあえて強調することで、高齢者やがん患者、がん経験者、その家族などを引き込める。実際、小池氏が街頭演説で鳥越氏について「病み上がり」と言及した点について、鳥越氏は最近のテレビ番組で、「がんサバイバーに対する大変な差別だ」と小池氏に噛み付く一幕もあり、是非はともかく多くの有権者の記憶に刻み込まれたはずだ。

そもそも出馬記者会見での第一声である「がん検診100%達成」は冷静に考えれば「的外れ」なのだが、鳥越氏が訴えれば、高齢者の共感を得られやすい。彼は要するに、「逆境」にあることを武器にしたのである。

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