役員の心を若手社員が動かしたNEC
NECでは、13年春から研究者数名がアジア新興国へと留職することが決まっているが、この導入が決まったのも、あるチャンピオンの存在があってのことだ。
僕たちは、NECのCSR・社会貢献室が主催する「NEC社会起業塾」というプログラムに参加していた。その関係でNEC社内で「留職」の話をさせていただく機会があり、そこに来ていたのが、僕と同い年で当時29歳のSさんだった。
Sさんは質疑応答で大量の質問を投げかけてくれたうえに、「留職、何とかして実現させます!」と宣言して去っていった。正直なところその言葉にあまり期待してはいなかったのだが、しばらく経って、彼から驚くべきメールが届いた。
「うちの役員との面会をセットできることになりました!」
聞けば、NECの役員の方が社内のブログでBOPビジネスに関連するテーマを書いているのを見つけて、Sさんが「面白い人がいます。ぜひ会ってください」というコメントを書き、その役員の方が投げかけに応じたのだと言う。なんとも大胆不敵だ。
NEC――応援団の援護射撃が起こした奇跡
面談当日、僕は会議室に着いて息を呑んだ。僕の目の前には、その役員の方だけでなく、人事部の決定権者や実務担当者など、僕が普段なかなか直接お会いできないような人たちが勢揃いしていたのだ。
さらに驚いたのは、僕の横に座ったメンバーたちだ。そこには、Sさんだけでなく、彼が声をかけて集まった10人ほどの有志の若手社員たちがずらり並んで座っていたのだ。僕がプレゼンを行うと、彼らは自分たちの言葉で「今なぜNECに留職が必要なのか」を語って、援護射撃をしてくれた。
しかもSさんは、面談の後に「意見交換会」と称して役員らを囲んだ飲み会を設けていた。この場でも、若手社員たちは「若手に挑戦の機会を与えてほしい」「大好きなNECを、もっと魅力的な会社にしていきたい」という“想い”を口々に熱く語ったのだった。
そして飲み会の終盤、役員の方がこう言った。
「小沼さん。留職、まずはやってみましょう」
信じられないことに、たった一晩で留職の導入が決まってしまった。翌日には人事担当の方が導入に向けたロードマップを作成してくださり、信じられないほどのスピードで留職は形になっていった。
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