2年目社員がうねりを巻き起こしたベネッセ
ベネッセコーポレーションでは、2013年1月に人事担当の社員1名がインドへ、初夏からもさらに社員2名の半年間にわたって「留職」することが決まっている。では、こうして留職の導入が決まるまで、いったいどんなことが起こったのか。
ベネッセで“チャンピオン”として動いてくれたのは、出会った当時まだ入社2年目だった2人の女性社員だった。創業間もないクロスフィールズが11年11月に初めての企業向けフォーラムを開催したとき、終了後に目をキラキラさせて話しかけてくれたのが2人だった。正直、第一印象は「学生?」と思うほど頼りない感じだった。でも彼女たちが「留職はうちの会社に絶対必要だと思うんです!」と熱く訴えかけてくれたので、後日ゆっくり話をしようということになった。
11年の暮れ、東京駅の居酒屋で一緒にビールを飲みながら、僕は彼女たちの抱えている悩みに心から共感していた。彼女たちは、入社時に持っていた「教育ビジネスで世界の社会課題を解決したい」という原点の想いを、なかなか普段の仕事と結び付けられずにいると言った。また、世界でビジネスを展開するために必要な人材だと言われて入社したものの、実際会社には、語学や海外経験を活かせるグローバルな環境での仕事はまだ多くはなく、将来像が描けず悩んでいる同期や先輩が多いと話していた。
もちろん、ビジネスの世界は入社してすぐに自分のやりたいことをすべて実現できるほど甘くはない。ただ、実は多くの企業でこのようなミスマッチは無数に起こっているのではないかと僕は強く感じた。
どの企業の人事部も「社員には想いを持って熱く働いてほしい」と言うし、多くの新入社員は「この会社で働くことで世の中の役に立ちたい」と、理想に胸を膨らませて入社する。しかし、連載第1回で書いたように、実際には多くの日本企業で、そうした若手の情熱がいつの間にか失われるという悲しい現状がある。
帰りがけ、2人は「これから留職の導入に向けて頑張ってみます」と明るく言ってくれた。でも、創業したばかりの弱小NPOと若手社員とでいったい何ができるのかと途方に暮れながら、僕は「うん、頑張ろう」という言葉を精いっぱい絞り出しただけだった。
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