隠岐「島宿」が"大入り民宿"に大化けした理由 後継者を育てなければ宿は消え地域衰退へ…
いよいよ夏休みシーズンの到来だ。楽しい思い出作りに、行楽客が海や山へどっと押し寄せる季節。その際、宿泊施設はやはり「ホテル」という人が多いと思われるが、たまには郷土料理をじっくり味わえる「民宿」はいかがだろうか。
こんな話をすると、「民宿って、海水浴場やスキー場にある宿?」「安いけれど清潔感やプライバシーの面で不安がある宿泊施設」「大学のサークルや釣りに行く時に安く泊まれるところ」といった、ネガティブな印象を持つ方が少なくないのではないだろうか。実際に民宿は全国的に激減している。民宿のオーナー側もマイナスイメージを払しょくしようと、宿名にはあえて「民宿」と付けずに「旅館」を名乗るケースも多い。
その中で、日本海に浮かぶ隠岐諸島の民宿は若い人たちが中心になって、民宿の素晴らしさを提供していこうと日夜奮闘している。この取り組みが奏効して客数を増やしている。この話を詳しくレポートする前に、まずは現在の民宿を取り巻く事業環境や課題について触れておく。
そもそも「民宿」とは何だろうか。「民宿」とは、民家が旅館業法の営業許可を得て営む宿泊施設で、業法上は「簡易宿所」か「旅館」のいずれかに属する。すなわち、「民宿」とは旅館業の一つであるが、法的には定義のない“通称”にすぎない。そのため民宿と聞いても、曖昧な概念が残って今一つハッキリしない。
合宿自体が減り民宿は個室形態へ転換
そこで分解して考えてみよう。まず民宿の一つの種類である「簡易宿所」は、多人数で部屋を共用する、すなわち相部屋のような形態の宿を指す。具体的には、ゲストハウスやカプセルホテルなど「ルームキーのない宿」がこれにあたる。一方、「旅館」とは個室の客室を前提としているので、こちらにはルームキーがある、といった違いになる。
これまで民宿といえば、学校行事等の合宿施設として利用されることが多く、「簡易宿所」営業が主体だった。合宿の場合、部屋に鍵があると逆に不便になり、トイレや浴場も共用が一般的だ。しかし、近年は合宿自体が少なくなったこともあり、民宿は部屋を改装して徐々に個室形態の「旅館」業としての営業にシフトしつつある。民宿が旅館業化している訳だが、あえて、ここで「民宿」と「旅館」の違いを整理してみよう。
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