隠岐「島宿」が"大入り民宿"に大化けした理由 後継者を育てなければ宿は消え地域衰退へ…
海士町では、島の郷土料理や島の人情に触れることのできる民宿を「島宿」と呼んでいる。時として島のマルチワーカーたちがその仕事を手伝う宿でもある。品質を維持し、お客様に喜んでいただくのが島宿の約束だ。
現在、島宿は島に4軒ある。「但馬屋」には青々とした田んぼが目の前に広がり、裏庭では鶏が走り回る。新鮮な魚、野菜、米をはじめ、卵や納豆・味噌にいたるまですべてが自家製の「自産自消」の宿。運がよければ島の民謡「キンニャモニャ」の踊り手の名手である女将さんの踊りが観られるかもしれない。
ほかにも、カウンター越しに若主人が酒と創作和食をふるまう居酒屋が1階で、2階が客室となっている老舗民宿「なかむら」。宮大工が手がけた大きな農家屋を使い、窓を開ければそこは海という環境で一日一組だけをもてなす「小崎」。気さくな女将さんが田舎に帰ってきたような気分にさせてくれる「和泉荘」がある。
海士町へは、米子空港からも近い境港港や七類港からフェリーや高速船で約2~3時間、隠岐空港のある島後・西郷港から約1時間で行ける。隠岐汽船は、途中いくつもの島を巡りながら進むので、のんびりした船旅を楽しめる。ぜひ一度訪れてみることをおすすめしたい。
お勧めしたい全国の民宿10軒
全国には、個性的な家族経営の民宿がたくさんある。民宿は家族経営の小さな宿で、大旅館のようなサービスは期待できないが、利用者が宿に合わせることで、その個性を満喫できる。中でもお勧めの民宿を10軒、最後に紹介しよう。
羊農場を営む松山さんの宿。村上春樹の小説のモデルかという噂も。夕食はもちろんジンギスカン!
●ろばた(山形県・蔵王温泉)
ジンギスカンといえば蔵王がその発祥の地。温泉街の居酒屋の2階は民宿になっている。源泉かけながしの温泉も。
●お宿やまもと(千葉県・館山市)
東京から近い館山で、地魚など地元産の食材にこだわった民宿。魚介のうまさには定評あり。オールドノリタケのコレクションも。
●ふらり(石川県・白山市)
白山麓の静かな山里で営む古民家を活かした小さな宿。料亭で修業したご主人の料理を囲炉裏端で。
●おおなみ(三重県・志摩市)
夏は海女が採ってきたアワビを、冬は延縄(はえなわ)漁で釣られた、とらふぐ「安乗ふぐ」のフルコースを浅井さんの料理の腕で。
●弥仙館(奈良県・天川村)
世界遺産・大峯山の玄関口。その昔、修験者も通ったといわれる名水の地に立つ。イノシシやアマゴ等の山の料理を味わえる。
●ファームイン・RAUM古久里来(愛媛県・内子町)
「木の中で眠る」をコンセプトにした円筒型の客室棟。少しオシャレな里山料理と森長さんご夫妻との語らいが楽しみ。
●松葉川屋(高知県・四万十町)
夏にはアユの火振り漁が残る四万十川も近く、アユ料理はぜひおすすめ。ペットも一緒に泊まれる一日2組の宿。
●四季の宿尾之間(鹿児島県・屋久島)
新鮮なトビウオや首折れ鯖など屋久島のサカナや自家製野菜、こだわりの玄米を、勇壮なモッチョム岳を望みながら堪能できる。
●赤瓦のふくぎ屋(沖縄県・渡名喜島)
沖縄で一番小さな村の島宿。といっても赤瓦の民家を再生して客室に。食事は母屋で島人と一緒に食べる。
日本の観光発展のために観光客数を維持しようとするなら「宿を減らさないこと」だ。そのため、宿の大多数を占める民宿を地域としてどう守り育てていくかが、今後、全国各地の観光政策の課題になってくるだろう。
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