「マザーズ指数先物」に過大な期待は禁物だ 「市場の安定化に一役買う」とは言い切れず
TOPIXや日経平均株価といった指数も、銘柄の入れ替え等によって指数構成銘柄が変わることはある。だが、指数構成ウェイトが高い銘柄、例えばTOPIXならばトヨタ自動車が、日経平均株価であればファーストリテイリング、KDDI、ソフトバンクが抜けることは、ほとんどあり得ない。
仮にシャープや東芝、オリンパスなどのように、一定の構成ウェイトを持つ企業が不祥事等で存続の危機に陥った銘柄が出てきた場合でも、株価が下落することで自然とその銘柄の構成ウェイトは下がっていくことになる。この株価下落は株価指数に反映されるので、これによって指数とポートフォリオの連動性が失われることはない。
TOPIXや日経平均株価など東証1部の株価指数は、「落第」はあっても「卒業」はほとんどない。対して東証マザーズ市場には「落第」も「卒業」もあるという大きな違いがある。このような新興市場特有の事情が、「東証マザーズ指数ETF」や「東証マザーズ・インデックスファンド」が登場してこなかった最大の理由になっていた。インデックスに連動する運用において、「落第」の影響は限定的であるのに対して、「卒業」の影響は大きなものなのだ。
なぜ「取引の厚みが増える」と言い切れないのか
こうした事情があるなかで、「東証マザーズ指数先物」の取引がスタートする。
先物の登場で、マザーズ市場の「取引の厚みが増す」ことで、先物を使ったヘッジ取引が行えるようになるという指摘が多い。しかし、「東証マザーズ指数先物」の登場によって、単純に「取引の厚み」が増し、ヘッジ取引ができるようになると考えるのはいささか短絡的過ぎる。
「取引の厚み」が増すための必要条件は、「相場観」以外の価値観で、参加する投資家が増えることだ。
「相場観」以外の価値観の代表的なものが「裁定取引」だが、マザーズ指数は日経平均などの指数と異なり、裁定取引の対象になりにくい。それは、前述のように指数に連動するバスケットを構築し管理していくことが難しいからである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら