安倍首相・バーナンキ会談の中身に問題あり 「ヘリマネ」実験に日本経済を利用するのか
日本株は今週に入って3日続伸となった。8日に発表された米雇用統計の強い内容を受けた米国株高の流れを受け継ぐ形で、日本株にもようやく買い戻しが入り始めている。またドル円も円高基調が反転し、100円割れのリスクは当面遠のいたように見えることも、買いを促しているといえる。さらに安倍首相が景気対策を打つ姿勢を示し、これを市場が好感したことも、株価の押し上げにつながっている。
英国のEU離脱決定以降の悲観一色のムードは一変し、あたかもアベノミスク相場は始まったころのような勢いすら感じる。13日の株価は高値から値を削っているが、日経平均株価が終値ベースで1万6500円を超えられるかが、次の焦点になる。これをクリアできれば、市場センチメントは好転し、さらに上値を追う展開につながる可能性が高まろう。
目立つ米国の学者に意見を求めるケース
無論、ムードだけで上昇できるほど甘くはない。それでも、株価形成のかなりの部分が「ムード」や「心理面」で構成されていることを考慮すれば、市場参加者が買いを検討したくなる材料は不可欠である。そのような状況の中で出てきたのが、前FRB議長のバーナンキ氏の来日である。なぜバーナンキ氏がこのような時期に来日したのだろうか。さまざまなスケジュールが組まれているのだろうが、その中でも安倍首相との懇談はきわめて意味の大きいイベントであったことは間違いない。
バーナンキ氏は、言わずと知れた「ヘリコプターマネー(ヘリマネ)」の研究で知られている。自身の研究テーマの一つでもあるヘリマネの効用について、デフレ脱却に失敗している日本政府に指南したと考えるのが自然であろう。聞くところによると、安倍首相との会談では、ヘリマネに関する具体的な話は出なかったというのが公式見解のようだが、そのような話をまともに受けとめる向きはもはやいない。
ここには大きな問題がある。日本政府は米国の学者に意見を求めるケースが増えている。過去に事例がない現在の経済環境・金融情勢において、彼らの研究結果をもとにした意見を取り入れようとする姿勢を問題視する向きも少なくない。彼らの意見をもとに行った政策に対する責任は、彼らにはない。最終的な責任はもちろん、日本政府にある。しかし、実際に彼らの意見をそのまま取り入れないにしても、すぐに彼らの意見を聞いて、それをあたかも「神のご託宣」のように扱うのは、あまりに危険である。
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