日本よ、グローバルを超えた先進国をめざせ 弱肉強食のグローバリズムでは、世界はもたない

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このプラネティズム思想を初めて提唱したのはダライ・ラマだ。明らかに人類の損益が共通するケースに、プラネティズムという概念が使われるのである。

たとえば、地球温暖化現象において特定の先進国が炭酸ガスの発生をいくら抑えても発展途上国が努力しなければ地球全体で見ると意味がない。逆に産業革命以来、好きなだけエネルギーを多消費してきた発展国が、今から発展しようとしている途上国に対して「エネルギーを使うな」という権利はないという見方も、当然ある。

こうしたケースの時、グローバリズムなら、地球上を一つの共同体とみなし一体化させる考え方のため、合意と契約で企業や発展国をコンプライアンスで縛り、さらには各国の文化を蹂躙しかねない。こうなると、各国のエゴが渦巻くG20の舞台では、何も解決できない。では、こうした複雑な問題をどう解決すべきか?

一つの思想や基準に統一する考えには無理がある。その点、プラネティズムはエゴを排して、お互いが尊重し合うという考えである。グローバリズムは、結局特定の国家が地球規模で特定のルールで縛りつけるが、プラネティズムはお互いの多様性を認め合ったうえでの協力」を通じ、地球全体を一体化していく、という考え方である。

日本はシンガポールも、アメリカにもなる必要はない。単なるグローバリズムを超えた先進国家として、日本的なプラネティズム思想を地球規模で広めていきたいものだ。 

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン社長

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なかむら しげお / Shigeo Nakamura

レアメタル(希少金属)の専門商社「アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長。中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

 

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