日本人に南シナ海問題が他人事じゃない理由 世界の戦争の歴史から、真の狙いを読み解け
国家主席就任の矢先に、アメリカが「世界の警察官をやめる」宣言をしたことで、習近平は勢いづいた。そして、2014年には南沙諸島の埋め立てを隠そうともせずに、急ピッチで完了させる大きなきっかけになった。そう見るのが自然だろう。
何かと強気だった中国だが、アメリカの軍事力はさすがに脅威であり、アメリカが世界の安全保障ににらみを利かせているかぎりは、下手には動けなかった。だが、そのアメリカが引く姿勢になったと見るや、あからさまに押してきたというわけだ。
ソ連崩壊後、中国は第一列島線、第二列島線という日本の軍事進出の目標ラインを定め、「対米防衛線」とした。「防衛線」とはいうものの、第一列島線は東シナ海、南シナ海全域が収まっている。第二列島線に至ってはフィリピンからグアム、サイパン、沖縄、近畿地方の沿岸まで収まるラインになっている。決して見過ごすことはできない。
防衛線のみならず、中国は南シナ海の領有権についても積極的である。1947年に独自に引いた「九段線」を根拠に、南シナ海の諸島の領有権を主張してきた。スプラトリー諸島に人工の島を作り、軍事拠点を思わしき施設を建設しているのも、この九段線に基づくものである。
このあたりは、世界の漁獲量の1割を占める優れた漁場でもある。そのため、ベトナムやフィリピンの漁師が締め出されたり、殺されたり、拿捕されたりという事件も起こっている。
国際法上は、満潮時に水に潜ってしまう岩礁は「島」ではない。したがって、そこをいくら埋め立てて「島」のようにしたとしても、国際法上は「領土」にならない。それを中国は無視して、領有権を主張していることになる。これは、判決が出たこれからも変わらないであろう。
日本に影響はあるのか?
日本は、南シナ海の領有問題の直接的な当事者ではないが、このまま中国が人工島と軍事拠点の建設を進め、周囲に原子力潜水艦を配備するようなことになれば、日本のシーレーン(海上の交通路)が1つ、大きく阻害されてしまう。
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