日本人に南シナ海問題が他人事じゃない理由 世界の戦争の歴史から、真の狙いを読み解け

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中国もまた、「海」への進出にたいへん熱心である。長く帰属問題でもめている台湾、「核心的利益」と位置付けている尖閣諸島、南シナ海の南沙諸島を埋め立て、滑走路などを建設してベトナムやフィリピンを圧迫している。まったく「らしい」といえば中国らしい、強引なやり方で海に拠点を築きはじめているのだ。

では、なぜ中国は海への進出に、これほどまでに執着しているのか。それは過去の度重なる戦争の末に、陸の領有がある程度固まったからなのだが、実はもう1つ中国にとってはのっぴきならない理由がある。軍事技術の発達だ。

テレビなどで、アメリカの軍事技術の映像を見たことはないだろうか。非常に鮮明で、砂漠だろうと森林地帯だろうと、内陸部の軍事施設は、ほぼ「丸裸」である。いくら優れた軍事施設をもっていても、あれほど鮮明な衛星技術をもって空から攻撃されたら、ひとたまりもない。

しかし、海中の原子力潜水艦であれば、空からはとらえられない。しかも原子力潜水艦は、燃料の心配なく長期間の連続航行が可能であり、あまりある電力によって海水から酸素も作れるので、数カ月以上の連続潜航が可能になっている。おそらく原子力潜水艦が現時点で最強の兵器だろう。

中国は、南シナ海を支配し、そこを通じて太平洋に原子力潜水艦を配備したい。もちろんアメリカは、自国の安全保障から中国の原子力潜水艦を南シナ海に抑え込みたい。南シナ海の南沙諸島では、米駆逐艦が哨戒活動を行い、中国がそれに抗議するなど、両国のせめぎ合いが実際に行われている。

中国は、「今、とにかく広い海が欲しい」のだ。

東アジアの安全保障をどう考えるべきか?

その中国では、2013年3月に習近平が国家主席となった。習近平は国家主席就任以前から「中華民族の偉大なる復興の実現」を掲げており、2012年、国家副主席として初めて訪米した際には、ワシントンポストのインタビューで「中国とアメリカとで太平洋を二分すること」を匂わせる回答をしている。

2013年6月、国家主席になってから訪米した際には、オバマ大統領に対して、「太平洋には両国(アメリカと中国)を受け入れる十分な空間がある」と明言。さらに露骨な野心を見せつけた。相手が引けば自分が押すというのが、国際政治の常道だ。

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