日本人に南シナ海問題が他人事じゃない理由 世界の戦争の歴史から、真の狙いを読み解け

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加えて、「今、とにかく広い海が欲しい」中国のことだ。一応は「防衛線」ということになっている第二列島線の範囲の領有権まで主張しはじめかねない。まず尖閣列島から沖縄へ、というわけだ。沖縄の米軍基地に対する反発は根強いが、かつてフィリピンは、米軍を撤退させたとたんに中国に進出された過去がある。もし沖縄から米軍がいなくなれば、そのフィリピンの二の舞を演ずる可能性もあると言わねばならない。

さらには太平洋をアメリカと二分するために、日本列島をすっぽりおさめる太平洋沿岸のラインまで手中にしたい――こんな本音を中国が秘めていたとしても、何もおかしくはない。

日本にとっても、他人事ではない

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尖閣諸島は日米安保の対象になるとアメリカが正式に表明したため、とりあえず一服の状態ではある。ただし、中国が独裁国家であるかぎり、日本にとっては潜在的脅威でありつづける。ましてやオバマ大統領が「アメリカは世界の警察官ではない」と明言した後のことである。南シナ海の領有権問題の余波が日本領に及ぶことは十分ありえ、日本にとっても、決して他人事ではないのだ。

日本は、フィリピンが中国の手に落ちないように後押しつつ、中国に対しては今回の裁定を守るように圧力をかけていくのだろう。

一方、中国も国際法無視のイメージを避けるべきである。さもないと、中国が二国間紛争での仲裁裁判所の裁定を無視することは、中国が商業ビジネスの世界でも国際仲裁裁判所での裁定も無視することにつながり、対中投資において中国のカントリーリスクを大いに高めることになるからだ。

ただ、短期的な中国の動きは要注意だ。南シナ海での実効支配をさらに強化するために、軍事演習なども辞さないだろう。この意味で、中国を取り巻く軍事緊張は増大しかねない状態だ。日本も隙を見せないように、細心の注意を払わなければいけない。こうした、日本や中国の今後の動きを見るうえでも、地政学的な視点は欠かせない。

高橋 洋一 政策工房会長/嘉悦大学教授

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たかはし よういち / Yoichi Takahashi

1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省(現・財務省)入省。プリンストン大学客員研究員時代、のちにFRB議長となるベン・バーナンキ教授の薫陶を受ける。内閣府参事(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官、内閣参事官(総理補佐官補)などを歴任。2007年に財務省が隠す国民の富「霞が関埋蔵金」を公表し、一躍、脚光を浴びる。2008年、退官。現在、大学で教鞭をとる

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