「ヘリコプターマネー」で日本経済は救えない これはダメ政策の「看板」をつけかえただけ
ここで問題になってくるのは財源だ。2015年度の税収は政府見通しを下回り、補正予算の財源などに活用できる純剰余金は2544億円にとどまっている。こうしたタイミングで「ヘリコプター・ベン」が来日し、安倍総理や黒田日銀総裁と会談を持ったことで、俄然国内で「ヘリコプターマネー」が注目を浴びることになった。
ヘリコプターマネーと異次元緩和はどう違うのか
「ヘリコプターマネー」とは、政府の発行する無利子、無期限の国債を中央銀行に無制限に買い取らせることで必要な財政資金を確保することである。
利子も償還もないということは、政府が手にする資金は「借金(負債)」ではなく日銀からの「お布施」だということ。負債ではなくお布施であるということは、政府は財政赤字を気にすることなくいくらでも国債を発行できるということで、財政赤字に苦しむ日本政府にとってとても都合のいい資金調達方法だといえる。
日銀はこれまでも「異次元の金融緩和」と称し、金融機関が保有する国債を買い取ることで大量の資金を市場に供給してきた。さらに市場金利をマイナスに誘導している。もはや収益を求める必要のある民間企業は国債を償還まで保有することは出来ず、実質的に国債を償還まで持ち続けられるのは日銀だけという状況が出来上がっている。
日銀が政府の発行する国債の3分の1を保有し償還まで保有し続けるという構図は、「ヘリコプターマネー」に近い状況だといえる。
しかし、日銀が金融機関から買い取って保有する国債には、利払いも償還(返済期限)もある。政府にとって負債になるかならないか、ここが「異次元の金融緩和」と「ヘリコプターマネー」の最大の相違点である。
「異次元の金融緩和」と「ヘリコプターマネー」のもう一つの違いは、前者では政府と民間金融機関が資金を手にするために、資金使途に関しては政府と民間の両者かそれぞれの判断で決めていくことになる。
一方、後者の場合は、民間企業には無利息、無期限の国債を保有する理由は全くないことから、発行する国債の全額を日銀が引き受けることになる。いわゆる「財政ファイナンス」である。
したがって、資金使途は政府の一存で決まる。
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