「ヘリコプターマネー」で日本経済は救えない これはダメ政策の「看板」をつけかえただけ
何の対価も払わずにタダで手に入れた「負債ではない資金」で政府が公共事業や社会保障などのサービスを行えば市場に流通する現金が増えるうえ、国民も政府の財政赤字が増えるわけではないので増税など将来の負担増を気にせずに消費をすることが出来る。これによって物価が上昇していくというのが「ヘリコプターマネー」推進論者の理屈である。
しかし、現実の経済がこのように動くかは保証の限りではない。
「ヘリコプターマネー」が公共投資など大企業を潤すための政策に使われるとしたら、アベノミクスで一度失敗した「トリクルダウン」(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちるとする考え方)に再度賭けるということになる。
政府が利息と償還という対価を払った資金を市場にばらまいた「異次元の金融緩和」のもとでは「トリクルダウン」は効果を発揮しなかった。では、ばらまく資金について、政府が対価を払わない「ヘリコプターマネー」はどうだろうか。これはかなり怪しい限りである。
物価は上がっても、個人の実質所得は増えず
また、「トリクルダウン」が効果を発揮しなかった反省から、「ヘリコプターマネー」を、商品券やバウチャー(引換券)等で個人に直接ばらまくことも考えられる。
しかし、個人に「ヘリコプターマネー」がばらまかれることが分かれば、世の中の物価はそれに先んじて上昇することになる。
内閣府の試算によれば、2015年度はGDPのマイナス1.1%、6兆円弱の「需要不足」状況にある。この「需要不足」が日本の物価低迷の原因となっている。こうした経済状況下で個人に「ヘリコプターマネー」がばらまかれ、「需要不足」が解消される方向になることが明らかになれば、企業はそれを見越して物価を引き上げていくことは想像に難くない。
ということは、政府や日銀の求める物価上昇という目的は達せられるかもしれない。だが、国民からすると実質所得は増えないため、個人消費は期待するほど活発化しない可能性が高い。
そもそも、政府がコストをかけて集めた資金であるか否かによって、受け取る側の消費行動が変わるという考え方には無理がある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら