取り戻せ、やんちゃ魂!「バイマ」の挑戦 新世代リーダー 須田将啓、田中禎人

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エニグモは珍しい共同経営責任者2人体制。最高経営責任者が2人いることによる難しさはなかったのだろうか。

田中:「大きな方向性ではあまり意見が割れないですね。ただ、どちらの思いが強いかで決めることは多い。そこは思いの強さに任せる。話せば、大体、何がベストかわかるし、お互いそんなに我が強いほうではないので、そっちがいいねとなる」

バランスが取れるという意味も大きいようだが、日本では例の少ない共同CEO。海外では多いともいう。

田中:「今は多い気がしますね。それから、当時、海外では結構増えていました。それを見て、いいなあと思ったんです。ヤフーも最初2人が立っていたし、我々が起業するときはグーグルが目立ち始めた時期で、あそこも共同代表ではないですが2人が立ってうつる姿が、別にいいんじゃないのと思った。

戦略的な意味もあったんですよね。取材を受けるときに、みんな1人。それだとそんなに目立たないし、目にも止まりませんが、2人だと印象に残るというのが、自分の経験上ありました」

その珍しい2トップ体制も残りわずかとなった。

エニグモよ、どこへ行く?

海外進出については、現地企業のM&Aを志向する。昨年末に「kaboodle」というソーシャルファッションサイトを運営する米国のイメージネットワーク社へ資本参加(同社の19.2%を出資)を決めたが、現地で人材を集める際の壁も意識しているようだ。

田中:「ほかのベンチャーをみて感じることは、日本のベンチャーがシリコンバレーに進出しても、優秀な人材が採れないということ。高給で採ってこようとしても、ほかもおカネを出しているので難しい。

それこそ、シリコンバレーの人たちは、シリコンバレーで生まれた会社で働きたいんですよ。よくわからないアジアから来た会社で働きたいとは思ってないですよね。いろいろみてるとやはり難しい。結果的に皆買収している。それがベストとは思いませんが。やはり、日本から海外に出て行くのは難しいですね」

今後はワントップ体制に向け須田CEOが前面に出ることになりそう

田中はエニグモ退社後も、この米国事業が立ち上がるまでは担当するとしている。「今回の提携が実現しなければ、エニグモの英語圏進出はしばらく実現しなかった」と、公式に説明するように、この事業が最後のチャレンジになるようだ。

会員数が100万人の大台に乗り、ファッション好きの多くの人が使う便利ツールとして認知度を高めるバイマ。田中は「後進に道を譲り、エニグモを託す。新陳代謝のよい、勢いのある会社にする」としており、須田体制の下でも経営の若返りもありそうで、海外進出の可能性も高まった。そして、バイマはさらに使えるサイトとして磨きがかかってきそうだ。

エニグモという会社がやんちゃな勢いを維持しながら成長を続けることができるのか。須田CEOの手腕が試される。そして、新天地でのスタートを切る田中氏の挑戦がどう進捗するのか。2人の起業家の今後から目が離すことができない。

(撮影:今井康一)

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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