人手不足が大打撃、地方「1人区」選挙のリアル 一向に改善されない「基盤拡大」という課題
まるで3年後に向けた出陣式のようだった。10日午後8時半、テレビで落選が伝えられた中村哲治氏(44)は高く手を振り、笑顔で事務所に現れた。
「皆さんのお許しがいただければ、これからも佐賀で政治活動を続けたい」。マイクを握った民進党佐賀県連最高顧問の原口一博衆院議員は支援者に感謝を述べた後、こう締めくくった。「彼を絶対に国会に戻そう。参議院のバッジが付くまで全力で支えていく」。
「2人も衆院議員がいたのに、この数字は厳しい」
相手は現職の若き内閣副大臣、福岡資麿氏(43)。民進県連は「勝てる候補」と表向き強弁したが、「勝負は3年後」と本音を漏らす関係者もいた。
県連が注視したのが、中村氏の能力と人物の見極め。政策通だが、難しい男。それが国会での中村氏の評判だった。奈良で県連会長まで務めながら消費税増税などに反対し、民主党(当時)を離党した。
選挙を終え、県連内から批判は聞こえない。能力は前評判通りで「3年後も一緒に戦いたいという空気がある」。前回から大幅増の12万票近く獲得したことで「合格点はクリアした」という声が大勢を占める。「最大の敗因は擁立の遅れ。責任を中村氏に押し付けることはできない」。
ただ、得票率31・3%は民進公認が立った1人区では群馬に次ぐワースト2。「曲がりなりにも2人も衆院議員がいたのに、この数字は厳しい」と陣営関係者。「『これから佐賀の声を聞く人に負けるわけにはいかない』という福岡氏の攻撃はかなり効いた」。県連として初の落下傘候補の難しさを痛感する。