なぜ『ジャパニーズ・ビーチプレス』は廃刊に追い込まれたのだろうか?
現在、ハワイでナンバーワンの日本語フリーマガジン(年間約50万部)となった『アロハストリート』(発行元:ウィンキュービック・ドットコム・インク)を経営するCEOの和田隆史氏は、その理由をこう説明する。
「毎回同じ記事と広告を載せているだけで、きちんと読者と向き合っていなかった。広告頼りのフリーペーパーは一度うまくいくと、ほとんど中身を改善しなくなります。特にハワイには、毎年安定して観光客がやってくるので、それで続けられたのでしょう。しかし、今はネットもあるし、観光客の嗜好も変わっているので、新しい情報をどんどん取り入れていかないと、読者はついてきません」
独自記事とメディアミックスが好評
『アロハストリート』の編集部は、日本人観光客なら必ず立ち寄るカラカウア通りのデューティフリーショップの入ったビルのオフィス棟にある。編集部員は編集長以下みな女性だ。編集部を訪れると、そこは日本の女性誌編集部と同じ雰囲気。4人の女性編集部員は、机上のPCに向かい、仲良く談笑しながら仕事をしていた。
「無料誌は広告を出してくれるところをどうしても記事化する必要があります。しかし、それとは別に、私どもでは女性部員が独自の視点で広告と関連しない記事を書いているので、確実に読者をつかんでいます。99年にはウェブサイトを立ち上げて、本誌と連動したメディアミックスでハワイの情報を発信してきました。2011年からフェイスブックとツイッターにも対応していますが、驚くほど反応があります」(和田CEO)。
実際、最新号(13年1・2月号)では「ハワイのあさごはん」の特集記事があったり、トレンドの人物のインタビューがあったりと、フリーマガジンとは思えない充実ぶりだ。
記事の評判がいいせいか、女性部員たちもみな表情が明るい。記事の中でも、編集部員による「編集後記ブログ」コーナーは人気がある。また、「クチコミ」は、毎号ハワイ旅行を楽しんだ読者が旅行の体験談を語るので、読者目線での最新情報があふれており、投稿も多いという。
『アロハストリート』が成功したのは、日本のメディアのハワイ特集で、たびたび取り上げられたことも大きい。また、表紙を飾ったハワイの読者モデルが、日本のモデルプロダクションにスカウトされて、実際に『JJ』や『Oggi』のモデルになったことも、認知度アップにつながった。こうしたことが重なって、現在、日本では「アロハストリート」の名前を冠したハワイの商品を扱うショップもオープンしている。
「あのショップは私どもが直接経営しているわけではなく、コラボレーションというかたちを取っている。ただ、ショップのおかげで『アロハストリート』の認知度が上がり、一つのブランドとなりました」と、和田CEOは話す。
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