フリーマガジンを支えるIT技術と広告
フリーマガジンの収益源は、言うまでもなく広告である。メディアに広告を入れるという発明がなかったら、20世紀のメディアの発展はなかったと言っていいだろう。これは、21世紀のネットの時代になっても変わらない。グーグルの収益の8割以上が広告収入であるのはよく知られた話だ。
実は、フリーマガジン、フリーペーパーの興隆は、IT技術の発達、ネットの進展と大きく関連している。特にIT技術の発達は、出版のハードルを引き下げた。コンピュータによるDTP化で、組版や製版の知識・技術がなくても出版が可能になり、さらに制作のコストが大幅に下がったからだ。それで、広告さえ取れれば無料でも収益が上げられる出版物が大量に生まれることになった。
しかし、IT技術の発達に続いたネットの進展は、取材コスト、情報収集コストを引き下げたものの、情報発信においては、紙媒体と競合し、広告でも紙媒体を食うようになった。
電通が毎年発表している「日本の広告費」2011年版によると、日本の総広告費は5兆7096 億円。このうちフリーペーパーやフリーマガジンの広告費は2550億円となっている。この額は前年比で96.6%であり、この市場は毎年縮小している。
これは、新聞・出版という紙メディアと同じ傾向であり、その打開策としては、今のところ、紙とウェブを両立させ、両方で広告売上を伸ばすしかない。すでに紙をあきらめ、オンラインに情報発信の主体を移行する動きも活発化している。
フリーマガジンとは対照的な日系人向け紙メディア
フリーマガジンの盛況とは対照的なのが、現地の日系人を対象とした日本語メディアだ。
現在、ハワイには、日刊紙としては、唯一の日本語新聞の『ハワイ報知』(有料)と、月、日と祭日、年末年始を除く毎日発行されている『日刊サン』(無料)がある。
『日刊サン』は、日本の『サンケイスポーツ』との提携でスポーツ・芸能ニュースに特化して、手軽な日本情報を伝えて読者を得ているが、『ハワイ報知』のほうは、毎年のように読者が減って、存続の危機に瀕している。
『ハワイ報知』は昨年、創刊100周年を迎えた。一時「100周年を迎えられないのでは」とも言われたが、支援を続けてきた静岡新聞の完全子会社となって、現在も発行されている。しかし、その部数は今では1000部台半ばまで落ち込んでいる。
ハワイの日系アメリカ人の人口は約30万人。最盛期には9000部以上あったというから、日系人の30人に1人が読んでいたことになる。しかし、年々、日本語の重要性は薄れ、部数は2000年には4414部、09年には1939部と激減してしまった。
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